[081]
参考人(警視総監) 田中榮一
昨日講和独立後第1回のメーデーが開催されまして、警察当局といたしましては、こうした意義あるメーデーが、きわめて厳粛に、また平和裡に、しかも明朗に行われるように要望いたしまして、主催者である総評の幹部の方々と、メーデーの実施に対しましては相当緊密な連絡をとりまして、事前準備にかかったのであります。
今回の第23回メーデー中央大会に対する事前措置といたしましては、実行委員会は産別系労組との統一メーデーを決定いたしまして、さらに29日には民戦系朝鮮人メーデー中央対策委員会の参加申入れを受諾するに及びまして、実は主催者側として大きな負担を意識せられたと考えますし、さらにその他学連も含めて中央大会が開かれるということになりまして、総評側とされましても警戒を相当厳重にせられまして、当庁とも常に連絡をとられておったのであります。
そこで今回のメーデーにあたりましては、メーデー主催者側としては、警視庁側と連絡をとって、凶器の携帯その他危険物の携帯等は、これを厳重に参加側に申入れをしまして、そういうようなものは絶対持ち込まないようにということは、主催者側からもかねがね参加の団体には申し伝えておったのであります。
そこでメーデーの実施にあたりまして、あそこに地図を掲げたのでございますが、大体5方面にわかれてメーデーを実施するということに話がきまりまして、一部は神宮外苑を出発して渋谷駅附近で解散する。一部は四谷塩町から大木戸を通って新宿駅附近で解散をする。これが第2隊であります。それから一隊は外ぼりを通りまして九段に出、九段から飯田町の附近に出、それから後楽園の附近において解散をするというのが一隊。それから第4隊といたしまして、南部の部隊でありますが、これは赤坂の溜池から虎ノ門、田村町に出まして、それから日比谷公園に入る。これが第4隊であります。それから中部のメーデー部隊としましては、これは赤坂見附に出まして、それから永田町のところを右折しまして国会のうしろに出まして、そうして総理官邸の横を通って人事院ビルの横に出まして、それから霞ヶ関を通って日比谷公園に入る。そこで南部の部隊とそれから中部の部隊が、日比谷公園の両側において解散をするということになったのであります。
大体中部に属する労組人員は約6万、東部1万2000、西部は4700、南部は1万4000、北部は9500、現在問題になりましたのは中部の6万、東部の1万2000が問題になったのであります。
そこで主催者側とせられましても、今回こうしたきわめて尖鋭矯激の分子が入りますので、その編成にも相当意を用いて、これを中間に入れるとかいろいろの工作をいたしたのであります。それから、あるいは他の方面にもこれを振り向けるというようなことにも努力されたのでありますが、これらのものは全然主催者側の命令に服せず、いよいよデモ隊が進行を始めまするや、全学連並びに都学連に属する学生約5000名、それから朝鮮人――これは全部が北鮮系でありますが、約2500人くらい、それから地区委員、これが大体約2000と算定いたしておりますが、約1万名に近いものがまず行進を開始いたしまするや、途中から隊伍を整えましてかけ足でメーデー部隊の先頭に立ったのであります。
そうして普通一般の他の部隊は、ブラス・バンドを先頭に立てて、きわめて明朗に秩序正しく正々堂々と進行いたしたのでありますが、これらの尖鋭矯激分子の一隊は、かけ足で算を乱してこれらの列を追い抜きまして、そうして中部並びに東部のメーデー部隊の先頭にいずれも立ったのであります。これらのものは一般のメーデーとは全然分離独立した形におけるメーデーになりまして、相当短時間のうちに日比谷公園に到着いたしたわけであります。
そうして日比谷公園に到着いたしまするや、主として学生並びに北鮮系の朝鮮人は、人民広場を闘いとれというようなことを盛んに叫びまして、その一隊は日比谷公園を出始めたのであります。そうしてその附近に警戒をいたしておりました警官隊と衝突いたしましたが、数の上で圧倒的にこれを制圧いたしまして、馬場先門に進出いたしまして、ここを警戒しておりました警察官もこれを排除しながら、二重橋方面に喚声をあげて突進を始めたのであります。
この際に特に申し上げたいのは、この中に加藤峯治という警視で、第一方面の予備隊長をやっておりました隊長でありまするが、これは約3箇中隊、1箇中隊70人として約210人の部下を率いて、皇居外苑を守っておったのでありまするが、この一部暴徒が喚声をあげて宮城に向って突進を始めましたので、これらの210名を率いまして、この部隊をかけ抜けまして、そうしてあの前にこの210名が体を犠牲に供して、この6000の暴徒と闘ったのであります。そして他の部隊が到着するまで相当長時間、この210名の部隊によってこれを守り続けたのであります。私は警察官としこの210名の寡勢をもって、少くも6000以上のものを数10分間持ちこたえたということは、まことに偉とすべきものであろうかと考えております。
やがて制圧されんといたしましたので、やむを得ずあるいは催涙弾を投じ、あるいは拳銃発射をいたしまして、逐次これらの暴徒を制圧いたしまして、やがて到着いたしました応援隊と協力いたしまして、これを祝田橋通りの自動車道路から向うに追いのけたのであります。
そうしてやがて到着部隊が続々来着いたしましたので、これらの部隊と協力いたしまして皇居外苑から逐次暴徒を一掃いたしまして、4時半には大体皇居外苑は大部分平静に復したのであります。
この乱闘の中におきまして、暴徒はあるいはプラカードの板をはずしまして、くぎを打ったものによって警察官をなぐる、ける、打つ。それから長い竹の先に相当鋭いやりみたいなものをつけまして、2間余の長いやりを持って警察官を突きまくる。あるいはまた野球のバットでなぐる。そのほかありとあらゆる、まことに鬼畜にひとしいこうした残虐な行動をとったのであります。まことに私どもは同じ日本人といたしまして、こうした鬼畜にひとしい残虐なる行動をするということを、遺憾にたえないのであります。
これがために警察官で負傷いたしました者は、重傷者68名、軽傷者672名、計740名の負傷者を出したのであります。しかし警察官はいずれも負傷はいたしましたけれども、絶対に現場を去らずに、最後まで敢闘いたしましたことは、まことに私どもとしましてうれしく存ずる次第であります。
特にここで御紹介申し上げたいのは、私が鬼畜にひとしい行為と申し上げましたのは、警察官がほりに大分投げ込まれた。それを救おうと思って警察官が行くとそれを投げる。そうしてやがて警察官がほりから上ろうとする者を、さらに大きな石でもって上から何回も頭を打つ、そうしてなぐる、また水の中に落される、上る、また落す。かくのごとき残虐なる行為を……。
(「警官はピストル持ってるじゃないか」「何だ」「黙れ」と呼び、その他発言する者多し」
[082]
委員長(自由党) 佐瀬昌三
静粛に願います。
[083]
参考人(警視総監) 田中榮一
それからまた多数の暴徒によって人事不省に陥っている警察官を、ほりの中に投げ込む。かくのごときまことに鬼畜にひとしい残虐なる行動をとったことは、私どもとしましては実に遺憾にたえないのであります。
そのほか今回の暴動におきまして、あるいは進駐軍の自動車を焼き払ったり、あるいは何ら罪のない外国人に対して暴行を働くということは、まことに遺憾にたえないのであります。(「罪がないことはない」と呼ぶ者あり)
罪がないというのは、暴行もせず、ただ普通に歩いている外国人に対していきなり暴行するということは、私ははなはだけしからぬことであろうと考えるのであります。そこで……。
[084]
委員長(自由党) 佐瀬昌三
なお一応の御説明を伺った上で、ただしておきたい点が数点あるのでありますが、武器あるいは暴徒の戦術等から見て、今までの捜査の段階から、組織的、計画的であったかどうか、あるいは背後の思想団体の関係はどうであったか、また現在審議中の破防法案との関係について、感想はどうかという点について、御意見を承りたいと思います。
[085]
参考人(警視総監) 田中榮一
今回の暴徒のやり方は、全然メーデーというものとは別な行動でありまして、いわゆるメーデーを利用した一つの暴力破壊活動であるというふうに私どもは考えておりまして、情報等も入手いたしまして、相当暴力行為等が行われるということも予想はいたしておったのであります。
ただ当局側といたしましては、これらの暴徒と、繁華街におきまして、町の中において乱闘をいたしますることは、一般の通行人等に非常な死傷者を出したり、あるいはその他の物件に損壊を来し、あるいは非常な損失を来すようなこともありますので、こういう点を考慮いたしまして、皇居前の広場に入れまして、乱闘をいたしたような次第であります。
それから今回の暴徒の使いました凶器は、まったく警察官かあるいはそのほか妨害をなすものに対して、これを殺傷する目的を持った凶器のみでありまして、これらは全部証拠物件として押収をいたしております。従って、いずれはどういう凶器を使ったかということが、はっきり国民の前に発表されることと考えております。
それから今回の騒擾事件におきまして、メーデーそのものがきわめて平穏裡に、円満にまた厳粛に行われましたことは、私どもとしてまことにうれしく存ずる次第であります。一般の労働者がこうしたものに何ら誘惑されずに、総評幹部の指導した所定の場所において秩序正しく解散をし、しかもそれぞれ帰路についておりまして、ここにはっきり一線が画されておるということであります。
従って私どもは、今回国会において御審議になっていらっしゃいまする破防法案につきましては、こうしたいわゆる騒擾事件についてのみこれが適用されるのでありまして、今回の労働組合のこの行動とは全然別にされた暴力行為でありまして、破防法案はこうした暴力行為についてのみ適用されるものであると私は考えるのでありまして、第一線の警察官として一日も早くこうした法案が成立いたしまして、日本の国内治安を守りたい、かように念願をいたしておる次第であります。
[091]
労働大臣(自由党) 吉武恵市
昨日のメーデーにつきましては、すでに警視総監からあるいはお話があったかも存じませんが、総評が主体となりまして、明治神宮外苑で行われたのであります。最初から非常に規律を守りまして、平穏に議事が進行しておったのであります。
最後の少し前ごろになりまして、時間的にいうと12時近くでございます。ほとんど行事が平穏に終りかけたころに、石川島造船におきまする左翼分子が参りまして、自分たちにも演説をさせろということを、メーデーの主催者の幹部に折衝を始めたのであります。そのすきに背後におりました全学連の人々が台の上にかけ上りまして、台を占拠してしまって、マイクをこわすというところから混乱が始まったのであります。
そこでメーデーの主催者であります島上君その他の幹部がこれを制止しましたが、なかなか聞かない。やむを得ず行事をそこそこにいたしまして、行進に移れ、そして早く解散をするということで、それぞれの班にわかれまして行進が始まったのであります。
東部の班は後楽園に参りまして解散をしております。それから西部の班は渋谷駅に参りまして、予定通り平穏に散会をしております。南部の者は市政会館に行っておりますが、これもいわゆる労働組合としては平穏に散会をしておるのであります。それから北部の班は新宿に向いまして、これまた平穏に散会をしておるのであります。
ところが中央の班が行進を始めまして、先頭に東交の組合が秩序正しく行進をしておったのでありますが、青山一町目近くになりますと、その背後から全学連と朝連の連中がかけ足でもってその班を追い越しまして、先頭に立って秩序を乱しながら行進を始めたのであります。従いまして東交の人々はそれらと一緒に行くことを好みませんで、相当距離を引離しながら予定の日比谷公園に入って行きまして、総評の組織労働者は予定通り日比谷公園で散会をしております。
ところが日比谷公園に先頭を切りまして入りました全学連の約5000近くの者と、朝連の2000近くの者は、日比谷公園に残りまして、そして2時半ごろになって南の口からいわゆる馬場先門にかけて、全学連が行進を始めておるのであります。その途中で自動車その他にも乱暴いたしまして、馬場先門から皇居前広場に入りまして、二重橋近くまで侵入をいたしております。そこでいざこざがあって、警察官によって一旦これを中央部まで押し返しておりますうちに、日比谷公園におりました朝連の者どもがかけつけまして、これが日比谷公園口から入りましてこれと合体をして、また再び混乱に陥った状態でございます。
従いまして皇居前広場における昨日のあの乱闘の中には、いわゆる組織労働者としてはほとんど加わっておりません。あそこに入りましたのは全学連と朝連と自由労務者の一部と、それからいわゆる産別系統に属しまする全金属の一部が加わっていたように思います。
先ほど警視総監からも話がございましたように、今日の組織労働者は総同盟でありましても、あるいは総評でありましても、やはり組合というものの立場を自覚されまして、できるだけメーデーを規律正しく行おうという努力を払われた点につきましては、私どもは敬意を表しておる次第であります。
昭和27年05月06日 参議院 本会議
[006]
法務総裁 木村篤太郎
去る5月1日のメーデーにおきまする騒擾事件の概略並びに被害状況、その後の取締状態並びに背後関係について御報告申上げたいと思います。
我が国の独立回復後初めて迎えました去る5月1日メーデーに際しまして労働者諸君の集会、デモ等の諸行事が全国各地において挙行されました。その数は520カ所、参加人員108万人を数えるに至っておりますが、良識ある労働者諸君の自覚の下に、おおむね無事平穏裡に行事がとり行われたのでありまするが、不幸にして、東京都内を初め、京都その他数カ所の地におきましてメーデー行事に便乗した一部極左的破壊分子の策動によりまして、前例を見ない極めて悪質な不祥事件の発生を見たことは、誠に遺憾の極みであります。
先ず東京都内におきまする騒擾事件の概況について申上げます。
今回の中央メーデーは、明治神宮外苑絵画館前を会場といたしまして、午前10時30分頃からいわゆる統一メーデーとして催され、極めて盛大な行事が行われましたが、大会の中途におきまして、石川島労組員約30名を初めといたしまして、全学連、職安細胞員ら約100名が突如相次いで演壇に殺到し、不法にもスピーカーを占拠し、参会者に対し、実力を以て人民広場へ行こうなどと激烈な口調で煽動いたしました。
一方、その間、会場内外に溢れました参会者に対しまして、都学連傘下の学生その他極左分子らは数班に分れて列中を縫い、「人民広場に行こう、人民広場を力で取り返せ」とアジリながら廻り、又「アカハタ」復刊第1号、「球根栽培法」、「平和と独立」、「平和と独立のために」等を資金カンパと称して販売いたしますと共に、激烈な内容のビラ数10種類を撒布したのであります。
やがて大会終了ののち、午後0時40分頃、5方面に分れてデモ行進に移りまして、東部、西部及び北部方面のデモ隊は予定の解散地点に至りまして平穏裡に解散いたしましたが、日比谷公園を解散地点といたしまする南部及び中部のデモ隊は、行進の途中、全学連、自由労組、在日朝鮮人らの一部極左分子の誘導によりまして、ジグザグ行進を行い、途中、石を投げたり、窓ガラスを破壊したり、或いは外人記者に暴行を加える等のことがありましたが、午後2時20分頃から日比谷公園に到着した大多数の穏健な労組員等は予定通り逐次解散したのであります。
然るに、全学連及び左翼的青年団体員を先頭に、朝鮮人、日雇労務者らの極左的破壊分子約2500名は、スクラムを組みまして日比谷公園正門を出て、都電交叉点において警官の阻止するのを突破して北上いたしました。途中第一相互ビル前に駐車中の外人自動車10数台に投石し、窓ガラス等を次々と破壊しつつ、無許可デモ行進を続け、折柄馬場先門を警備中の約30名の警官の警戒線をも突破いたしまして遂に皇居前広場になだれ込んだのであります。
その頃二重橋附近においては、すでに警察官約250名が警備に就いておりましたが、乱入した暴徒は気勢を揚げまして、指揮者の号令の下に、警察官に対しまして一斉に投石したり、或いは持っておりますところの棍棒を振い、竹槍で突込む等、寡勢の警察隊に対し執拗な攻撃を繰返しまして、警察隊側に負傷者続出し、警官の1名は内濠に突き落されるという事態に立ち至ったのであります。
そのため警察隊は後退を余儀なくされ、二軍橋前附近に移動をするうち、漸く警察隊も増強いたされまして、約2500名となったのでありますが、他方、暴徒は更にその数を増しまして、約6000名となりまして、(「何だ暴徒とは」と呼ぶ者あり)その後、組織的な攻撃はますます熾烈となり、警察官のこれら暴徒鎮圧のために使用した催涙弾も効を奏しません。
警察官の負傷者続出いたしまして、生命身体の危険を避けるため止むを得ず拳銃を使用するに及びまして、暴徒は漸く後退を始めたのでありますが、警察隊は一挙に暴徒を祝田橋附近まで押返し出したのであります。
併しながら、その際、暴徒は警察官3名を捕えまして、梶棒にて殴打し、重傷を加えた上、これを祝田橋附近外濠に突き落し、這い上らんとする彼らに対しまして更に石塊を頭上に投下するなど、暴虐の限りを尽したのであります。
而もその間、暴徒の一隊約500名は、祝田橋附近を通行又は停車中の外人自動車等に棒や石塊を投げつけ、その窓ガラスを破壊する等の暴行を続けたのであります。ここにおいて警察隊は止むなく発砲して、盛んに攻撃いたしまする暴徒を祝田橋から日比谷公園北側電車通りに押し出したのでありますが、暴徒は電車通りに駐車中の外人自動車10数台を転覆いたしまして、これに火を放ち、炎上せしめまして、これが消火に出動した消防車等にまで投石を続けるなど、破壊的行動の限りを尽しまして、首都中心地帯一帯の静謐を著しく擾乱したのであります。
併しながら逐次増強された警察隊によりまして追い散らされまして、同日午後5時30分頃に至りまして漸く解散するに至った次第であります。以上が今回の騒擾事件の概要であります。
次に被害状況を申上げたいと思います。
現在までに判明いたしました被害状況は次の通りであります。警察官の負傷者が重傷者83名、これは全治3週間以上であります。軽傷者が678名、合計761名の多数に達しております。外国人の負傷者は合計12名であります。暴徒側の負傷者は推定でありますが約200名であります。ほかに暴徒側の死亡者1名を出しておるのでありますが、(「それが問題だ」と呼ぶ者あり)同人は検事の死体検視の際ズボンの右ポケット内に小石10数個を入れているのを発見したので、(発言する者多し)騒擾事件現場において暴徒として重要な役割を演じた者と推測されるのであります。なお、本件における警察官の発砲は、前述の通り暴徒の襲撃に対して自己又は他人の生命身体に対する急迫不正の侵害に対する防衛のためなされたものと認められるのであります。
次に物的被害でありますが、警視庁側の側車附オートバイ焼却が1台、米軍側の公用又は外人所有自動車焼却が14台、米軍側公用又は外人所有自動車損壊が101台、警察官所携の拳銃3挺が奪取されたのであります。以上であります。
次に事件の措置について申上げます。
本事件の暴徒関係者に対しましては、当日現場において、放火罪、公務執行妨害罪等の現行犯として8名を逮捕いたしました。検察庁におきましては、今次事件を騒擾事件と認定いたしまして、昨5日までに騒擾罪の罪名の下に逮捕した者は合計225名に達しておりまするが、目下引続き東京地方検察庁及び東京警視庁におきまして、国警本部、特別審査局の協力の下に事件関係者の徹底的糾明に当っておりますので、逮捕者の数は今後相当増加する見込であります。
なお、逮捕されました者のうち、日本共産党員又は北鮮系朝鮮人が多いのでありまして、相当多数の極左分子のおることが判明しておる次第であります。
検察庁におきましては、目下全力を挙げまして、右の事件の被疑者の確定逮捕、証拠の収集に当っておりまして、特にその背後関係、計画性の有無等、事件の全貌の究明に努めておる次第であります。真相判明次第断固として処断する所存であります。
次に本事件の性格を申上げたいと思います。
目下検察庁におきまして捜査中でありますので、確定的なことは差控えますが、今回のメーデー・デモの参加者の大部分を占めます総評傘下の穏健な労働組合員は、終始平穏裸に行事を行い、予定の解散地点においてそれぞれ無事解散したのであります。本件は、一部極左的破壊分子が群衆の興奮を利用し、激越な煽動によって行なった計画的組織的な暴挙でありまして彼らのいわゆる軍事委員会の指導による計画的軍事活動として実践されたものと考えられる節があるのであります。
実際、騒擾に加わったと思われます暴徒は、それぞれあらかじめ用意しておりました日本共産党地区委員会旗、同細胞旗、北鮮国旗のほか、竹槍、梶棒、釘附プラカード等を振りかざしまして、これを武器として使用しておるのでありますが、その数およそ6000名、内訳、旧全労連系労組員及び自由労組員約1000名、全労連系左翼学生約2000余名、極左系朝鮮人2000数百名程度と推定いたしておるのであります。
なお、今日までに騒擾罪容疑として検挙した者につきまして、年齢層を見ますると、30才未満の青少年が全体の約3分の2を占めております。又、学生、朝鮮人、自由労務者、日本共産党細胞員などの占める割合が比較的多いということは、この暴挙に参加した者が特定の年齢層と或る種の組織体に属する階層であることを推知せしめるものであります。
なお、今回のメーデーに際しまして、全国的に特異な事犯といたしまして、東京以外では、京都における府庁、市役所、五条警察及び派出所に対する襲撃、破壊等の事件を初め、仙台、姫路、大津、八日市、名古屋、横浜、綾部等の各地において若干の暴力事犯の発生を見ておるのであります。
京都におきまする事件は、公務執行妨害罪等の罪名で63名を検挙して目下捜査中でありますが、警察側に重傷13名、軽傷332名、計345名の負傷者を出しておるのであります。
次に、今次事件の背後関係について申述べたいと思います。
今回の不祥事件の背後関係について見まするのに、本年2月21日の反植民地デーにおける蒲田事件、同23日の京都事件等と同様、その主体は一部極左的破壊分子であって、彼らの企図する暴力革命の準備の実践の一環として行われたものと推測されるのであります。
今次メーデーに際しましては、これら極左的破壊分子のメーデーを利用する策動に関する情報が入手されたのみならず、メーデー会場及び行進中において、「人民広場へ参集せよ、実力で人民広場を闘い取ろう」などという内容のビラ多数が撒布されまして、大衆を煽動するなどの行為が活発に行われておるのであります。又日本共産党幹部岩田英一君が主要な役割を演じており、又京都において、日本共産党の有力党員である府会議員、市会議員らが煽動行為をしていることもほぼ明らかになっておる次第であります。
更に又、東京並びに京都における破壊的暴力行為の手段方法は、彼らのいわゆるゲリラ的軍事活動方針に従って計画的且つ組織的に行われたものであると推定されるのであります。今回の事犯は、その背後において明らかに一部破壊的な共産主義者らの組織を基盤として、その指導並びに煽動の下に行われたものであると推定されるのであります。
次に事前措置について申上げたいと思います。
特別審査局、国家地方警察本部及び東京警視庁におきましては、今回の不祥事件に関連する情報を事前に若干入手したのでありまして、治安機関におきましては相互に連絡して対策を協議いたしました。
殊に東京警視庁当局といたしましては、中央メーデーの主催者の幹部に対しまして数回に亘り厳重に申入れを行いまして、暴力的不法事犯の発生防止につき協力を求める等、十分なる方途を講じたのでありまするが、一面において、主催者の統制力とデモ参加者の自主的精神とに信頼し、徒らに警察力の介入するがごときことなきよう慎重な態度を持していたのと、他面におきまして、メーデー大会散会後デモ隊が5方面に分れて行進したので、警備力を分散せざるを得なかったために、遂に予想外の事態の発生を見るに至ったと認められるのであります。
今次事件に多数の重軽傷者を出しました事情について申上げます。
只今申上げましたように、警察のメーデーに対する取締は、できる限り干渉と介入を避けることを本旨といたしまして、不法事犯の発生の際はもとより適宜処置することといたしておったのでありますが、今回の暴徒の携えていたプラカード、指揮棒等は、それぞれ巧みにカモフラージュされておりまして、いつでも竹槍或いは釘付棍棒として、攻撃武器として使用できるようになっていたのであります。更に暴徒等は石やガラス瓶等を用意しておったのみならず、現場には無数の石塊、石が現われたが、これらが投擲武器として使用されたことなどが警察官に多数の負傷者を出した原因と思われるのであります。
又暴徒は、或いは投石、殴打し、或いは靴で蹴り、或いは濠内に突き落し、甚だしきは拳銃を奪う等、全く暴虐残忍を極めまして、警察官は生命の危険にもさらされたので、止むを得ず催涙ガスや拳銃を使用したのでありまして、暴徒側にも死傷者を見ることとなったものと考えるのであります。身命を賭して暴徒鎮圧に挺身し、重軽傷を負った警察官に対しましては、でき得る限りの慰藉と報償とを以て報いたいと思っておる次第であります。
なお駐留米国軍人等の自動車等に対し重大なる被害を与えたことは、国際信義上誠に遺憾至極でありまして、政府といたしましては、陳謝の意を表し、十分調査の上、賠償等の処置をとる次第であります。
新憲法下、基本的人権擁護の名に隠れまして、口に平和、独立、自由を唱えながら、みずからは憲法を無視し、国法を否定して、暴力主義的破壊活動をあえてし、毫も恥ずることなき極左的破壊分子の存在と、その集団の実態について、この際、国民一般が改めてその認識を深められ、これが対策に日夜奔走する治安当局の活動に対して、どうか積極的な御協力を与えられんことを切望する次第であります。(「やめ給え」と呼ぶ者あり)
穏健な労働運動或いは大衆運動はもとよりこれを保護助長すべきでありまするが、これに便乗して陰に陽に治安を撹乱せんとする破壊分子に対しましては、治安機構の充実強化と適切なる立法措置とによって、この種事犯の防遏(ぼうあつ)並びに処理に万遺憾なきを期する所存であります。
終りに臨みまして、我が国が講和発効により独立を回復した直後に、而も首都において、かかる不祥事態の発生を見、多数の人的及び物的の被害を生じ、あまつさえ地方の静謐を害しましたことにつきましては、重ねて遺憾の意を表したいのであります。政府といたしましては、今後この種事態の再発を防止するため万全の措置を講じ、以て国民の期待に副(そ)いたいと存ずるものであります。以上を以ちまして私の報告を終ることにいたします。(拍手)
[011]
厚生大臣・労働大臣(自由党) 吉武恵市
(略)今回の暴動はあらかじめ計画された問題であります。(「計画とは何だ」と呼ぶ者あり)
そのことは、曽(か)つて京都の円山公園で行われました総評の決起大会におきましても、一部の極左分子がこれに便乗いたしまして、暴動的な行動をとりましたことと併せ考えて明瞭であります。(「そんな事実はない」と呼ぶ者あり)
[018]
厚生大臣・労働大臣(自由党) 吉武恵市
重盛さんは、我々労働組織者はあそこが秩序正しくメーデーを行うと言われますが、私どもは総評その他がメーデーを秩序正しくやろうと努力された点はこれを認めるのであります。
併しながら、今年の京都における総評の決起大会の場合におきましても、又過日の明治神宮外苑におけるメーデーの際においても、努力はされましたが、遺憾ながら一部極左分子の暴動的な無秩序な行動に対しては、遺憾ながらこれを阻止し得なかったということはお認めにならなければならんと思います。(拍手、「何を言うか」「責任者は責任をとれ」と呼ぶ者あり)
[023]
厚生大臣・労働大臣(自由党) 吉武恵市
なお、第2に、今回の暴動事件に対して一般の組織労働者が同調しなかったという点につきましては、私も誠にこれを喜ぶものでございます。ただ今日のメーデーにおきまして、総評が統一メーデーにかくのごとき暴力的な共産分子を入れたという点につきましては、今後大いに反省すべきものがあると思います。
なお、メーデーは、総評におきましてはこれを秩序正しくやろうと努力された点は先ほどお答えした通りであります。併しながら、最後に当って全学連その他の極左分子があれを占拠いたしました際に、総評みずからの手によってこれを阻止できなかったということは、今後のやはり総評において最も反省すべきところだと特に感ずるのであります。(「おかしなことを言うな」と呼ぶ者あり、拍手)
[033]
法務総裁 木村篤太郎
今回の事件はメーデーの行事が終了後に行われたのであります。これをはっきりさしておきたい。メーデーは先刻申上げた通り無事に終了したのであります。その後になっていわゆる一部の尖鋭破壊活動分子が行なったものであります。これが計画的に行われたということは私が先刻申上げた通りであります。
而して兼岩(※傳一。日本共産党)君は高橋某なる者の死亡したことについて話されましたが、当時の状況を見た者は、これはまさしく正当防衛であるということは、はっきり認識できるであろうと思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)
如何に彼らの残虐な行為があったか。(「どっちが残虐か」と呼ぶ者あり)
皆これを見た者は痛憤しているのであります。この点については、私は全然この警官に対して同情を表するものであります。(発言する者多し)
而して兼岩君は7名が殺されたとかいうことを言われておりますが、我々の所にはさような報告は入っておりません。かような次第でありまして、本件はどこまでもメーデーとの関係はない。メーデーの行事との関係はない。一部破壊分子の活動であるということをはっきり申上げておきます。
昭和27年05月06日 衆議院 本会議
[005]
法務総裁 木村篤太郎
(略)
[011]
自由党(自由民主党) 中川俊思
去る5月1日、独立後の初のメーデーにおきまして、共産党を中核とする一部過激分子の計画的暴動に端を発し、さながら革命前夜とおもわせるがごとき暴力メーデーに終ったことは、平和日本を念願する友好世界各国の期待にそむくとともに、独立の第一歩にあたって日本国民の名誉に汚辱を塗りつけたものとして、まことに千秋の恨事というべきであります。(拍手)
この日の暴動が単なる突発的、偶発的のものでなく、また挑発されて起った感情的なものでもないことは、暴徒の行動を見れば明らかでありまして、あらかじめ周密に計画され、しかも共産系朝鮮人による相当の軍事的知識によって指導された、すこぶる規模の大なるものであったことは、一点疑う余地がないのであります。
すなわち、赤旗は竹やりにとりつけられ、プラカードの支柱には五寸くぎを配し、さらに火炎びん、石ころなどの武器をあらかじめ用意していたことは、周到なる準備を整えていたことを物語るものでなくで何でありましょう。
さらにまた、駐留軍の自動車に放火したり、駐留軍人をほりに投げ込む手段など、とうてい単純なデモから思いついたものでなく、明らかに暴動の計画が立てられ、この計画をデモに乗じて拡大せんとしたこと、また一点疑う余地がございません。
同時に、日本共産党の煽動が今回の暴動に拍車をかけたことも争うべからざる事実でございます。(拍手)すなわち、日本共産党は、今回のメーデーを行動メーデーとせよと指令していたのを初め、去る4月20日、関東地方委では、メーデーに備えて諸闘争を整備し、万全の措置をとれと、暗に暴動を示唆したアジ指令を出していたが、少くともこの2つの指令が空前の不祥事を招来した一原因であることも断じて否定できないのであります。
今回の不祥事が、警官隊との衝突によって事態がさらに激化したことは、事の性質上やむを得ないことといわねばなりませんが、要は、この暴動の主力をなす過激分子が、背後に秘められた計画的行動をプログラム通りに発展せしめたものと断ぜざるを得ないのであります。
過般来、全国にわたって、共産党の煽動による集団暴行事件が頻発し、われわれは行政監察委員会において取締り当局の注意を喚起していたところでありまするが、これら数多くの集団暴行事件が、メーデー当日における暴動の予行演習であったにかかわらず、何らの対策のなかったことは、政府監督下にある取締り当局の怠慢ではなかったか。
のみならず、あの暴動化を、事件後数時間たっても政府が知らなかったということは、治安行政上ゆゆしき問題でありまして、かくては独立日本の社会秩序を保持することあたわざるに至ると思うが、政府は現行警察法に改正を要求する意思はないか。
思うに、今回の不祥事件が内外に大きな衝撃を与え、独立早々のわが国の信用を一夜にしてくつがえしたことは、米国における各新聞が筆をそろえて、「日本共産党員米人を襲撃、日本人30万赤色暴動」などの見出しによって、いずれもこの事件をトップに揚げたのを初め、英国においても各新聞が、「共産主義者メーデーの暴動を煽動、平穏メーデー暴動と化す」等の記事を掲げて、わが国に対する警戒を厳にせんとしつつあることでも明らかであります。これを思うとき、政府はいかにしてこの不信にこたえんとするのでありまするか。
今回の、共産党を中核とする過激分子の計画的暴動に対しては、ひとり共産党員を除いては、あらゆる政党も、あらゆる言論機関も、あらゆる団体、組合も、あげてこの不法を糾弾し、断固たる処断を要請しているが、政府は民主政治の破壊をたくらむこれら過激分子に対し、治安立法、労働立法上いかなる決意と対策を有せらるるのでありまするか、この際国会を通じて、その所信のほどを大胆率直に内外に表明さるる意思はありませんか。
さらにまた、終戦後、北鮮系朝鮮人のわが国内における経済撹乱、治安撹乱は実に言語に絶するものがあります。今回の暴動に際しても、これら朝鮮系の過激分子が采配を振っていたことは明瞭でありまして、善良なる朝鮮人のためにも、政府は思い切った朝鮮人対策を樹立する考えはないか。
およそ一国の社会秩序を守ることは民主政治の要諦であります。しかるに、憲法に規定されたる自由に藉口して社会秩序を乱るがごときは、民主政治を破壊するものであり、国民としての義務を果さざるものと断ぜざるを得ません。かくして、社会公共の福祉を害し、憲法を蹂躪するがごときは、われわれ純正日本人の断じて黙過できざるところであります。
私は、ここに、8000余万の日本国民中、国籍だけ日本に持つ第三国従属人を除いた他のあらゆる階層を代表して政府にお尋ねしていると言っても、あえて過言にあらずと信ずるのであります。何とぞ政府は本件に関し確固たる決意と対策を大胆率直に表明さらんことを強く要望してやまない次第であります。(拍手)
[014]
改進党 森山欽司
私は、ここに、去る5月1日、東京において独立後初めて行われた第23回中央メーデーについて惹起された暴動事件につき、改進党を代表して政府の所信をただすものであります。
この事件は、過去23回のメーデーのうちで最も凄惨をきわめたものであり、特に独立後わずか4日目にかくのごとき未曽有の不祥事件の発生を見たことは、まことに遺憾かつ痛憤にたえないところであります。しかしながら、本事件の是非はともかくとして、われわれは謙虚な心をもって、これを過去6年有余の長い占領下の安易さにとかくなれた政党並びに国会に対する一大警鐘とも聞くべきでありましょう。
さて、この事件は、五全協以来の日本共産党の軍事方針による計画的騒擾事件であると伝えられ、革命の予行演習ともいわれ、これを否定するものは、当の共産党の諸君以外に何人もないことは事実であります(拍手)もし、しかりとすれば、祖国を異にする共産党員の諸君は、復刊されたアカハタによれば、この事件について何ら責任を感じておらないのでありますから、その諸君に対して、いまさら多くの言葉を費す必要はないのであります。ただ、ここにおられる共産党の議員諸君にして、一片のヒューマニティを持たれるならば、ただちにこの議場から退場されんことを勧告したいのであります。(拍手)
なおまた、伝えられるところによると、メーデーの参加者のうち、一部の自由労働者を除いて、一般の組織労働者の諸君は、秩序ある行動をとり、彼らの破壊的陰謀に巻き込まれなかったのであります。私は、健全なる労働運動の発達を心から望む一員として、これを不幸中の幸いとして喜ぶものであり、また大衆の健全なる常識に敬意を表するものであります。
けれども、このことは、このメーデーを計画し、実行した幹部諸君の行き方の問題とはおのずから別個の問題であり、たとい事件が形式上メーデー終了後であったといっても、その責任を免れることはできないのであります。
総評、労闘を中心とするメーデー実行委員会は、最近の傾向の通り、全労連系組合や産別系組合といえども単位組合としての参加を容認したようでありますが、さらにこれを越えて、事実上全学連や旧朝連系等の左翼団体と共同歩調をとるに至ったと観察されるのであります。これはまさに、去る3月20日、かの騒擾事件を惹起した、京都における総評主催の弾圧法規粉砕総決起大会と軌を一にするものであります。
すなわち、今回のメーデーの中心スローガンには、再軍備反対、民族の独立を闘いとれということを掲げているが、これは本年のメーデーを目前に控えた4月22日に発表された、ソ連共産党から日本国民あてのメーデー・スローガン、すなわち外国の占領に対し祖国の独立を確立し、平和を擁護するため勇敢に闘う日本国民にあいさつを送る、これとまさに相呼応するものがあり、かく今日総評の主導権を握る人たちの考え方は、日共の割込み戦術に好個の機会と口実を与え、日共の大衆路線の具体的な支持を示す危険があるのであり、それは、4月25日の総評機関紙において、メーデー実行委員長であり、総評の政治部長であり、かつまた左派社会党の中央執行委員である島上善五郎氏が、この統一メーデーは労働者の祭典ではない、再軍備反対等の闘争の勢ぞろいをする日だと、きわめて戦闘的かつ政治的な言辞を吐いておられるのを見ても明らかであります。
さらに、そういう考え方に立って、今回のメーデーにおいては、共産党からの祝辞も受付けたばかりでなく、会場の内外に極左分子の蠢動を見のがし、遂には日比谷における騒擾事件の素因をなすに至ったのであります。しかも、メーデー実行委員会における準備も、前々から、かかる騒擾事件の危惧があったにもかかわらず、単産間の代表演説のとりきめやスローガンに、きわめて政治的な安保条約、行政協定の廃棄を入れるか入れないかなどに精力を注ぎ、かんじんの共産党の割込みに対する真剣な対策を何ら取上げなかったのであります。これはまさにメーデーの責任者たちが負うべき社会的責任感の欠如を物語るものであります。(拍手)
しかも、このメーデー実行委員会は、今回の事件が解散後における不祥事件であって、実行委員会としては関知しないとの声明を出し、いささかも遺憾の意を表明しないばかりか、警察官の発砲、催涙弾の乱射が事態を激化したとさえ公然唱えて恥じないのであります。かかる態度をわれわれは糾弾します。世論もまた、これをきびしく指弾しておるのであります。
しかも、さらに遺憾なことは、左派社会党もこれと同様の見解をとり、あたかも共産党のごとく、この事件はすべてが政府の責任であると声明しているのであります。
労働者の政党をもって自認し、今回のメーデーにも赤色新党旗をかつぎ出して祝辞を送り、党主鈴木茂三郎君等が、ともにスクラムを組んで練り歩くという、あっぱれなる労働者の政党ぶりを見せられたことは、必ずしも悪いこととは申しませんが、それだけにまた、今回の騒擾事件を醸成するに至った従来の行き方については、総評左派幹部とともに、その不明を天下に謝すべきであります。左派社会党が共産党と真に行き方を異にするならば、共産党との明確な一線を政策並びに行動の上において具体的に明らかにする責任があることを銘記すべきであります。(拍手)
[018]
厚生大臣・労働大臣(自由党) 吉武恵市
なお第2に、今回のメーデーについて、総評がこれに巻き添えを食わなかった点はいいけれども、しかし一部の責任があるということでございます。
私も、今回のこの暴動について、総評がこれに参加しなかった点は、日本の労働組合史上において、まことに喜びといたすところであります。しかしながら、森山さんも指摘されましたごとく、今回のメーデーにおいて、かくのごとき共産主義的極左分子を統一メーデーに参加させ、しかもメーデーの最後に、全学連その他の左翼分子があの台の上を占拠しまして、そうして混乱に降れた際に、これを総評の名において防止できなかった弱さにつきましては、今後といえども労働組合として反省してもらわなければならぬと存ずる次第でございます。(拍手)
[035]
厚生大臣・労働大臣(自由党) 吉武恵市
また今回の事件は、いかにも一般の労働者大衆が入ったように言っておられますが、先ほど法務総裁の御説明にもありましたごとく、総評は明治神宮外苑でメーデーの行事を行い、それぞれ計画通りに行進をして散会しております。ただ共産主義的な朝連及び全学連の一部の人たちだけが入っておるのであります。
私どもは、今後といえども、かくのごとき破壊的な分子が労働運動に便乗することは断固反撃するつもりでおります。(拍手)
昭和27年05月07日 参議院 地方行政委員会
[003]
政府委員(国家地方警察本部警備部長) 柏村信雄
5月1日の第23回メーデーの状況について御説明を申上げたいと思います。この第23回のメーデーは講和発効後初めての催しでありまするし、なお破防法反対のストの直後であることとか、統一メーデーが圧倒的に多いことなどのほか、独立によりまする解放感も反映いたしまして、一般的に活気のあるものであり、全国の実施個所も520カ所に及び、参加人員が約108万に達したのであります。
併しながら他方これに便乗いたしまして、極左系の学生、朝鮮人、自由労働者等は警察官とか米国へに対しまする極めて悪質な挑発的暴力行為による計画的撹乱を行いまして、遂に東京都皇居前広場での放火を含みまする騒擾事件、又京都におきましては、市役所、府庁、派出所等に対する襲撃を含みまする騒乱事件を惹起いたしたのでありまするが、全国的に見ますると、この東京と京都の場合を除くほかは一般に平静でございまして、特に御説明申上げるほどの事件は起っておらんのであります。
不法事件の起りました府県は小さいものも含めまして、青森、宮城、それから東京、神奈川、京都、滋賀、兵庫、愛知、奈良の9都府県でございまして、35件に上っております。これに対しまして現在まで容疑者の検挙400数十名を見ておる状況でございます。
東京都の騒擾事件につきましては昨日本会議において法務総裁からもかなり詳細に述べられましたし、本日警視庁からもお見えになっておりまして、後ほど御説明があると存じますので、東京の分につきましては事前の情報、又国警も参加いたしましての警察措置等について若干申上げ、主として私よりは京都における騒乱事件について詳細の御説明を申上げたいと存ずるわけであります。
東京におきまする騒擾事件につきまして、事前情報といたしましては日本共産党東京都委員会におきまして、3月21日付通達65号として、本年のメーデーに対する通達をいたしておるのでありまするが、ここで非合法中核自衛隊を広範囲に組織し、全面的統一指導権を取るように指示をいたしておるのであります。
又細胞会議でメーデー参加には竹槍の先に赤旗を付けよ、各人に催涙弾、目つぶしを携行せよ、又PD工場及び工場の上級幹部の家族を襲撃せよというような情報も入手いたしておったのであります。
又民戦では4月13日にメーデー当日は自労に働きかけ、共同闘争を行い、税務署、市町村役場、予備隊にデモを行い、デモ隊は2派に分れ、1隊は役場にデモをかけ、警備力を牽制し、他の1隊は税務署にデモする、予備隊には随時随所に平和署名、傭兵反対署名を強要し、場合によっては脅迫する、又デモには竹槍、火焔びんを準備せよというような指示をしたという情報が入っておるのであります。
なお当日日共の党本部におきましては、岩田英一氏が大会終了後皇居前広場に集結せよというような指示を出したという情報も入手いたしておるのであります。
[005]
参考人(警視総監) 田中榮一
(略)
[007]
法務政務次官(自由党) 龍野喜一郎
本事件が発生いたしますると同時に、東京検察庁におきましては、直ちに係員が現場に臨みまして、本事件は騒擾事件であるという認定の下に、騒擾に関する罪、並びに公務執行妨害に関する罪として検挙を開始いたしたのであります。
今日まで判明いたしておりまする送検を受けました数字は、先ほどの警視総監の御説明にもありました通り、278名でありまするが、目下引続き東京地方検察庁及び東京警視庁におきまして、国警本部、特別審査局の協力の下に、事件関係者の徹底的糾明に当っておりまするので、逮捕者の数は今後相当増加する見込であります。検察庁におきましては目下全力を挙げて、右事件の被疑者の確定、逮捕、証拠の収集に当り、特にその背後関係、計画性の有無等、事件の全貌の糾明に努めておりまするが、真相の判明次第徹底的に糾明して断固たる処置をとる決意を持っておるのであります。
次に私どもが見まする本事件の性格でございますが、目下検察庁におきまして捜査実行中でありますので、確定的なことは差控えますれども、今回のメーデー・デモの参加者の大部分を占める総評下の穏健な労働組合員は、終始平穏裡に行事を行い、予定の解散地点において、それぞれ無事解散いたしたのでありまするが、本件は一部極左的破壊分子が群衆の興奮を利用し、激越なる扇動によって行なった計画的、組織的な暴挙であり、彼等のいわゆる軍事委員会の指揮によって計画的軍事活動として実践されておるものと考えておる次第であります。
実際騒擾に加わったと思われる暴徒は、それぞれあらかじめ用意していた日本共産党地区委員会の旗、同細胞の旗、北鮮国旗のほかに、竹槍、梶棒等の付いておりまするプラカード等を振りかざし、これを武器として使用いたしたのであります。
なお、今日までに騒擾罪の容疑で検挙した者は、先ほど申しました通りの数字でありまするが、その年令層を見ますると、30歳未満の青少年が全体の約3分の2を占めており、又学生、朝鮮人、自由労務者、日本共産党細胞員などが占めておる割合が比較的多いということが、この騒擾事件の特徴であると考えておるのであります。
次に今事件の背後関係について考察いたしまするならば、今まで検挙いたしましたものの取調によって察しまするのに、この背後関係について想像いたしまするのに、本年2月21日の反植民地デーにおける蒲田事件、同月23日の京都事件等と同様、その主体は一部極左的破壊分子であって、彼らの企図する暴力革命の準備の実践の一環として行われたものと推測いたしたのであります。
今次メーデーに際しましては、これら極左的破壊分子のメーデーを利用する策動に関する情報が入手されたのみならず、メーデー会場及び行進中において、人民広場へ参集せよ、或いは又実力で人民広場を戦い取ろうなどという内容のビラが多数に撒布されて、大衆を扇動するなどの行為が活溌に行われ、又は日本共産党幹部の岩田英一君が主要な役割をいたしておったのであります。
こういうようにして、法務当局といたしましては、この事件を単なる事件と見なくて、相当の根拠ある組織的な破壊活動と見ておるのでありますが、最後に一言申上げまするならば、この騒擾事件によりまして、暴徒測にも死者1名並びに相当数の負傷者を出したのでありまするが、これに対する警察官の責任であります。
即ち警察官が発砲によってそういう死傷者を発生せしめた場合を考えて見ましても、これは、暴徒の襲撃によって自己又は他人の生命身体に対する侵害に対する防衛のためでありまするので、法務当局としてはこれは当然正当防衛を以て律すべきものと判断をいたしたのであります。従いましてこれに対する国家賠償の責任はないものと考えております。
本事件を通観いたしまして、私どもの感じておりますることは、目下国会に提案いたしておりまするいわゆる破防法の必要をますます痛感いたしたのでありまして、何とぞ皆様におかれましても破防法の成立につきましては一層の御協力をお願いする次第であります。
昭和27年05月07日 衆議院 法務・労働委員会連合審査会
[018]
改進党 森山欽司
しかしながら今日の労働運動の指導権を握る総評左派の人たちの考え方というのは、これはきわめてはっきりしておる。昨日の本会議においても私は指摘したのでありますが、4月25日の総評機関紙において、メーデー実行委員長であり、総評の政治部長であり、かつまた左派社会党の中央執行委員である島上善五郎氏が、この統一メーデーは労働者の祭典ではない、再軍備反対等の闘争の勢ぞろいをする日だと、きわめて戦闘的かつ政治的な言辞を吐いておる。
それから事実上左派社会党の機関紙と見られている社会タイムスの5月3日の社説は、こういうことを言っております。今回の騒擾事件は、昨年秋の講和以来日本の民衆の間に積み重ねられた怒りの火薬の自然発火であるとし、また破防法に対する民衆の正しい憤怒の爆発にあるというような言い方をしておる。要するにああいうような動向についても、これをきわめて弁護しておるのであります。
昭和27年05月07日 衆議院 地方行政委員会
[008]
参考人(警視総監) 田中榮一
(略)
[010]
法務政務次官(自由党) 龍野喜一郎
(略)
[076]
自由党(自由民主党) 野村專太郎
そこで総評を中心にしてメーデーを敢行するという事前にあたっては、警視庁も相当周到に各種のことを具体的に打合せをされたと思うのですが、たとえばプラカードにおける五寸くぎとか、あるいは新聞の伝うるところによりますと、鉄骨によるわくをこしらえ、ただちにこれが武器に変ずるようなこと、またその途中においても石、しかも相当大きな石まで投げ込むというようなことが行われておりますが、今日この首都における相互担々たる道路の上に、そういう石がそう散在しているわけはない。しかも行進中の舗装道路においては、そういったものを拾う機会もないと私は思います。このことはあらかじめ計画をされておるのではないかと思います。それから竹やりが相当持たれたというのですが、これは京都なり他の地区でも見られるのです。これは懐中や何かに納められるものではないと思う。
なおそれらのものがあるといたしましたならば、私はこれらに対する取締りなり、事前の対策なりに、その間における何か欠陥があるのではないかと考えておるのでありますが、これらに対する手落ちはなかったかどうかということを、お尋ねいたしたいと思います。
[077]
参考人(警視総監) 田中榮一
もちろん会場内に持ち込むプラカードその他持物につきましては、主催者側にも厳重なる条件を付しまして、凶器その他銃砲、火薬類の持込みを禁止するという条件で許可をいたしたわけであります。
ただ主催者である総評側といたしましては、もちろん総評自体としての自衛態勢を整えまして、警戒員その他を相当会場に配置して、十分注意はしておったようでありまするが、石塊であるとか、あるいは竹の先に鋭い矢先みたいなものを――これは現物を現に警視庁に押収いたしまして、検察庁に証拠物件として送致してございまするが、長さ2尺ぐらいの金のやりが竹の先についておりまして、そうして大きな赤旗でその竹やりの上の矢先を包んで、会場に持込んだようであります。そうして会場に持ち込むと同時に、その旗をほどいてやりをあらわしているというようなこと、
それから現に警察官が殴打されましたときに、その警察官の負傷者が直接私に話すことでありますから間違いないと思うのでありまするが、手の中に入るような平べったい石でもって頭をなぐるわけであります。これで2、3回なぐられたならば、頭蓋骨はほんとうに粉砕されてしまう。これで少し脳底骨をやられまして、現在耳から鼻から出血いたしております。この石は皇居前広場にもありません。それから日比谷公園にも、こうした石は見当りません。これはおそらく紙に包んでポケットに入れるか、あるいは身体の中に持って来て、そうして現場において出して、この石を使っておるということが、はっきりいたしておるのであります。これは現に負傷した警察官から私個々についてこれを聞いておりますので、こうした物はおそらく参加の際には外に現わさずに、あるいは弁当箱のようなかっこうをして腰にぶら下げて来る場合もありましょうし、あるいはまた洋服の中にこれをつっ込んで来るということも考えられるのであります。
おそらく竹やりのようなものは、みんな旗を先につけて、旗で巻いて来ておるのじゃないかと思います。それから現にプラカードの類は、板さえはがせば、くぎが出て来るのでございまして、大体においてプラカードに板をかぶせて、くぎの出た棒で争闘したということになっております。それからそのほか皇居前広場の中にありましたいろいろな交通制限のためのくいとか、いろいろなさく等がございましたが、それをほとんど全部破壊いたしまして、そのくぎのついた棒切れによって警察官に暴行をしておるような状況であります。
もちろん事前におきましては、警察側も、また主催者である総評側も、相当な注意をいたしておったのでありまするが、しかし何分にも20万に近い大衆のことでございまするから、なかなか一々これが警戒、取締りということは、非常に困難であったことは事実でございます。
昭和27年05月17日 衆議院 行政監察特別委員会
[005]
委員長(自由党) 内藤隆
5月1日の皇居前広場騒擾事件に関しまして、事前の計画が3月の中ごろから立てられ、4月に入ってから具体的の準備が都内共産系の組織で進められていたといわれておりますが、特審局側では事前計画についてどのような情報を入手しておられましたか、その点をひとつお述べ願います。
[006]
証人(法務府特別審査局長) 吉河光貞
お答えいたします。
5月1日、皇居前広場で行われた騒擾事件につきましては、私どもといたしましては、次のような事前の情報を得ていたわけでございます。その内容を簡単に申し上げますと、4月の中旬前後におきましては、一部の破壊的な左翼分子は、統一メーデーを強力に推進するとともに、このメーデー行事を機会として、あるいは東京都内の警察署あるいは交番等を襲撃するというような情報がありました。
ところが4月の末ごろになりましてから、次のような情報が入手されたわけであります。メーデーに対しては、敵は消防隊をも動員、大がかりな弾圧の態勢を組むであろう。われわれはメーデーを防衛する強力な戦闘態勢を組む必要がある。1は労組大衆団体の大衆的扇動指導部の設立、2は機関としての指導部の確立、現地における指導その他について、そして3にはメーデー各参加団体に行動隊、自衛隊を大衆運動として組織させる。特に青年、学生、民戦、日鮮行動隊その他を結集して中央大会自衛隊、各地区自衛隊をつくるというような情報がありました。
さらに4月の30日になりまして、次のような情報が入手されたのであります。大会終了後、日比谷公園にデモる。中央部隊は実力を行使して人民広場に行進を強行する。これには敵がある程度感づいて警備力を重点的に向ける気配がある、相当の犠牲が出ると思うが、敢行することにきまった。実行の指導は党の軍事委員が当る。軍事委員会の連中は中部のデモに参加する組織に対し、中核自衛隊の編成に狂奔している。行動隊は今晩中に編制整備されよう。かような情報を入手したのであります。
[007]
委員長(自由党) 内藤隆
あなたの証言中にもありましたが、全学連あるいは都学連、北鮮系の朝鮮人、これは祖防委員会といわれておりますが、この組織がメーデーに対する暴力計画をしておったということは、大体において想像はつくのですが、こういう暴力計画等も、やはり情報を入手しておられたわけですね。
[008]
証人(法務府特別審査局長) 吉河光貞
ただいま申し上げた情報は、これらのものの中の破壊的な分子の動向を示すものと考えております。
[009]
委員長(自由党) 内藤隆
さような情報が入っておる以上は、特審局としては、メーデーの事前において、警備を実施する機関と打合せをしておるか、あるいはその情報をこれら各種機関に流しておられたと思いますが、その間の事情を御説明願います。
[010]
証人(法務府特別審査局長) 吉河光貞
お答え申します。メーデー行事にからんで、一部の左翼破壊分子の動向につきましては、きわめて深甚な注意をもって情報収集をいたしておりまして、ただいま申しましたような情報は、逐一関係治安機関に通達しております。特に4月30日の情報につきましては、私がこれを調査部長に命じまして、東京警視庁その他各治安機関に通達させました。
[011]
委員長(自由党) 内藤隆
そういう通達が行っております関係上、共産系の尖鋭分子が皇居前広場を奪還するということをスローガンにして、大規模な軍事的行動に出るということは、もうあなたの証言で事前に情報がわかっておった。この連絡等は、あなたは直接4月30日にはそれぞれ協議をしておられたという今の証言でありまするが、このメーデー騒擾事件に関しまして、日共系の労組あるいは思想、文化団体等はどういう批判を行うておるか。またどういう方法等を考えておるか、さような情報が入っておりまするならば、これを述べてください。
[012]
証人(法務府特別審査局長) 吉河光貞
お答え申します。5月1日の皇居前広場における騒擾事件につきましての新聞、報道界、あるいは思想、文化、労働方面、並びにその他の諸団体のこの事件に関する論評につきましては、すでに公の出版物として発表されておることだと考えております。従いまして当委員会におかれましても、かような批評なり批判につきましては十分御承知のことと思っておるのでありますが、私といたしましては、先ほど来申しました極左的な分子の間でこの事件をいかに評価し、いかに批判し、いかに取扱っているかということにつきまして、簡単にその報情を申し上げることにいたしたいと考えております。
最近彼ら破壊分子の間にVノート、Wノート――Vノートと称する指令通達書が流布されつつあるのであります。5月5日付のものにつきまして申し上げますと、
「一、人民広場の闘いについて」
と題しまして、次のような書き出しをしているのであります。
「屈辱の講和条約発効後3日目の第23回メーデーは、米帝と売国吉田政府の国民的権利を奪う断圧と売国奴愛労の分裂活動の集中的な表われである、人民広場使用禁止を無効にさせ、国民のものに奪い返すために果敢な闘いを展開し、実力で人民広場を占拠することを宣言した。
労働者の合言葉は「人民広場へ」であり、米帝と吉田の武装権力の催涙弾、ピストルの乱射と闘い、大衆の憤激は町にまで伝わり敵を圧倒した」
労働者の合言葉は「人民広場へ」であり、米帝と吉田の武装権力の催涙弾、ピストルの乱射と闘い、大衆の憤激は町にまで伝わり敵を圧倒した」
というようなことを書き出しといたしまして、進んで
「吉田政府は米帝に対しては請求されもしないのに損害賠償を申出謝罪し、日本国民に対しては破防法成立を有利にしようと威嚇し、愛国者を総検挙する、その売弁的な本性をますます国民の前にさらけ出した。
一部学生、朝鮮人、自由労働者並びに共産党員の計画的犯罪であると革命的な行動の先頭に立った愛国者を暴徒と呼び、一部の極左分子の陰謀であると、あらゆる機関を総動員して動揺する中間層を引きつけ、党をたたきつぶし、くさびを打込むためにやっきになり、党非合法化の策動をますます露骨に進めている。
これに同調する島上を初めとする社会民主主義者は、この愛国者を非難する声明をメーデー実行委で決定し、中間層の動揺を深める役割を明らかにして来た。
ここで妥協や足踏みするならばさらに敵は切り込んで来る。敵は二重橋に追い詰められた予備隊のように孤立し動揺し、出ばなをたたきのめしてしまえば、われわれのように背後にいて投石で擁護する広汎な大衆を持っていない。ここで断固たる反撃を組織し敵に立ち向うならば敵は動揺後退する。中間層を引きつけるには大衆に勇気を与え、一層の反撃を組織することである。
占領法規の消滅と破防法の未成立は吉田政府の法的空白を来している。これは日本国民と世界人民の闘いによってかちとられた空白である。モスクワ行き一つを見ても吉田政府の売国的法律が日本国民を縛り得ないことを現わしている。敵が人民広場の闘いを口実に破防法の成立をあせればあせるほど大衆は反撃する。これは吉田の命とりである。
当面の敵の空白を活用し、大膽(だいたん)に反撃を組織し、破防法粉砕、吉田内閣打倒、国会解散の一大政治反撃をかけること、勝利のかぎは、大衆へ大衆へと入って行くところにある。以上の評価の上にただちに実行すべき点を指示する。」
一部学生、朝鮮人、自由労働者並びに共産党員の計画的犯罪であると革命的な行動の先頭に立った愛国者を暴徒と呼び、一部の極左分子の陰謀であると、あらゆる機関を総動員して動揺する中間層を引きつけ、党をたたきつぶし、くさびを打込むためにやっきになり、党非合法化の策動をますます露骨に進めている。
これに同調する島上を初めとする社会民主主義者は、この愛国者を非難する声明をメーデー実行委で決定し、中間層の動揺を深める役割を明らかにして来た。
ここで妥協や足踏みするならばさらに敵は切り込んで来る。敵は二重橋に追い詰められた予備隊のように孤立し動揺し、出ばなをたたきのめしてしまえば、われわれのように背後にいて投石で擁護する広汎な大衆を持っていない。ここで断固たる反撃を組織し敵に立ち向うならば敵は動揺後退する。中間層を引きつけるには大衆に勇気を与え、一層の反撃を組織することである。
占領法規の消滅と破防法の未成立は吉田政府の法的空白を来している。これは日本国民と世界人民の闘いによってかちとられた空白である。モスクワ行き一つを見ても吉田政府の売国的法律が日本国民を縛り得ないことを現わしている。敵が人民広場の闘いを口実に破防法の成立をあせればあせるほど大衆は反撃する。これは吉田の命とりである。
当面の敵の空白を活用し、大膽(だいたん)に反撃を組織し、破防法粉砕、吉田内閣打倒、国会解散の一大政治反撃をかけること、勝利のかぎは、大衆へ大衆へと入って行くところにある。以上の評価の上にただちに実行すべき点を指示する。」
と申しまして、第一としまして
「大衆に訴える基本点、人民広場は終戦後国民に解放された、毎年50万の大衆の集まる国内最大の集会であるメーデーに、この広場を使用させないのは、政府が国民の政府でない証拠である。」
云々と述べまして、次に
「真相を知らせるために全営業所が行動を起すこと、目撃としていた大衆は全面的に闘いを支持し、大衆自身が戦闘に参加した愛国行動は広場の外へまで広がり、最高裁、桜田門、日比谷、朝日新聞前、有楽町、馬場先門に至る広範な地域を大衆の創意によって展開されている、これら広場内外の真相を大衆に知らせることから始めよ。アカハタ号外利用、写真展、壁新聞等宣伝の大攻勢をかけること。」
次に
「南部の経験では、敵は個人的な自慢話から情報を得て検挙を拡大した。個人的な態度(武勇伝など)を排して職場地域での政治討論を組織し、党内における個人行動ではなく、大衆行動を組織せよ。」
次に
「できるところから決議をとり、田中、安井、吉田にぶつけること、特に破防法が国会審議中であるから、各党代議士に圧力をかけることが大切である。労働組合、民主団体の抗議は一刻も猶予することなく追撃をかけること。」
次に
「メーデー実行委の声明を支持する日和見主義者に対する闘いを職場から開始すること。組合青年部が動揺している、経本、人事院では一切の責任は政府にあると声明書を出した。統一派は総評声明をやり直せの攻勢をかけること、統一委員会は今までの組合をどう統一するかでなく、階級的統一を闘いとる観点から取組み、特に地区労から全労働者にアッピールを出すこと。敵は大規模な捜査をやっている、これを進める職制、愛労を、愛国者を売り渡す売国奴として摘発し、調査を拒否させ粉砕せよ。
敵は4・18炭労大会、統一メーデーでかちとった革命的労働戦線統一を、執拗にぶちこわして来る。これを粉砕する闘いは今後の労働運動の質的向上の転機であるから重視すること。」
敵は4・18炭労大会、統一メーデーでかちとった革命的労働戦線統一を、執拗にぶちこわして来る。これを粉砕する闘いは今後の労働運動の質的向上の転機であるから重視すること。」
次に
「犠牲者の即時釈放の抗議、損害賠償の要求、救援カンパを起すこと、団体として取上げること。」
こういうようなことを述べておりまして、次に
「当日の情況、戦術上の教訓はつづいて総括し報告するが、大衆の盛り上りと創意がすばらしかったこと、大衆的行動中核隊なしには闘えないこと、軍事行動が大衆のものになったこと、敵の志気は低いこと、大衆は的確な党の指導を望んでいること、大衆の革命性を党がつかみ得ないで信頼せず、またこれに追随する立遅れを示し、党員一人々々が大衆の指導者になり得なかったこと」
などを述べているのであります。
さらに進みまして5月6日付の文書には、その末尾に、中核自衛隊の問題といたしまして、
(イ)といたしまして
「参加した大衆はプラカードの柄、旗竿で武装した、広場の石は堀り起され、一斉に武器の必要を訴え、現地での武装強化(ビンなど)に一致して発力した。」
(ロ)としまして、
「1時間半にわたる広場内の遊撃戦術で3回の突撃を行い、敵を翻弄した、敵の催涙弾を投げ返すなど大衆の勇散な創意性が発揮された。」
(ハ)としまして、
「風上にあたる唯一の入口祝田門は大衆とデモ隊が占領し続け、敵を広場の中へ包囲したこと。」
(ニ)としまして、
「公園を根拠地として約3時間にわたり市街遊撃戦を闘ったこと。新しい創意で高級自動車が次々とひっくり返され、1本のマッチで炎上させていること。占領軍ビルの攻撃、このすばらしい創意と経験、戦術能力は深く学ぶ必要がある。
味方の志気は旺盛で、敵はひるんでいたにもかかわらず、最も問題のあったのは、行動の指導が立ち遅れたことである。中核行動隊はまだ訓練されていないために、最後まで隊として闘うことができなかった。行動の統制は局部的にしかとり得ず、全体がすばらしい行動力を示しながら統制がとれなかった。これが組織され訓練された行動中核隊を通じて系統的に指導されたならば、成果は飛躍的に拡大されたことは明らかである。
大衆は強固な組織を望み、掌握下に入るものである。大衆行動の指導に当る全党員は常にこの思想的、組織的準備を強化しなければならない。特に南部の民族独立行動隊の成果を生かし、明確な目的の意識のもとに強化拡大し、地区的結集をはかり、これが5・30の大衆行動の主体となる。
また大衆が疲れを見せ、敵の攻撃にひるんだとき、行動中核隊はその志気を鼓舞し、隊伍を整えるために大衆の勇気を振い起す宣伝、扇動の行動隊とならなければならない。宣伝、扇動の行動隊となって闘争の政治的発展の中核となるためには、政治訓練の不足を克服する必要があり、実践的数育が計画される必要がある。」
「参加した大衆はプラカードの柄、旗竿で武装した、広場の石は堀り起され、一斉に武器の必要を訴え、現地での武装強化(ビンなど)に一致して発力した。」
(ロ)としまして、
「1時間半にわたる広場内の遊撃戦術で3回の突撃を行い、敵を翻弄した、敵の催涙弾を投げ返すなど大衆の勇散な創意性が発揮された。」
(ハ)としまして、
「風上にあたる唯一の入口祝田門は大衆とデモ隊が占領し続け、敵を広場の中へ包囲したこと。」
(ニ)としまして、
「公園を根拠地として約3時間にわたり市街遊撃戦を闘ったこと。新しい創意で高級自動車が次々とひっくり返され、1本のマッチで炎上させていること。占領軍ビルの攻撃、このすばらしい創意と経験、戦術能力は深く学ぶ必要がある。
味方の志気は旺盛で、敵はひるんでいたにもかかわらず、最も問題のあったのは、行動の指導が立ち遅れたことである。中核行動隊はまだ訓練されていないために、最後まで隊として闘うことができなかった。行動の統制は局部的にしかとり得ず、全体がすばらしい行動力を示しながら統制がとれなかった。これが組織され訓練された行動中核隊を通じて系統的に指導されたならば、成果は飛躍的に拡大されたことは明らかである。
大衆は強固な組織を望み、掌握下に入るものである。大衆行動の指導に当る全党員は常にこの思想的、組織的準備を強化しなければならない。特に南部の民族独立行動隊の成果を生かし、明確な目的の意識のもとに強化拡大し、地区的結集をはかり、これが5・30の大衆行動の主体となる。
また大衆が疲れを見せ、敵の攻撃にひるんだとき、行動中核隊はその志気を鼓舞し、隊伍を整えるために大衆の勇気を振い起す宣伝、扇動の行動隊とならなければならない。宣伝、扇動の行動隊となって闘争の政治的発展の中核となるためには、政治訓練の不足を克服する必要があり、実践的数育が計画される必要がある。」
というようなことが書き出されているのであります。
[013]
委員長(自由党) 内藤隆
相当詳細に情報を得ておられるようですが、その情報を聞きますと、日本共産党は共産主義国家群の一環として、人民政府樹立を最終の目的として、あらゆる政治活動、軍事活動を開始しておるという情報なり実情が相当に入っておるのですが、今日のメーデーの騒擾事件は、その具体的な一つの事例として見ることができるかどうか、この点について御説明を願いたい。
[014]
証人(法務府特別審査局長) 吉河光貞
お答えいたします。かような左翼破壊分子の団体的活動が行われている疑いはきわめて深いのでありまして、これにつきましては目下関係機関と協力して、その実態につき調査を進めている次第であります。
つまりこの破壊的な団体が、委員長御質問のような、日本共産党と関連性ありやいなやという点につきましても、われわれとしては関係機関と協力して調査を進めている次第であります。
[015]
委員長(自由党) 内藤隆
調査を進めておるので、日本共産党との関係があるのかどうかということの的確な証言はできない、こういう意味ですな。
[016]
証人(法務府特別審査局長) 吉河光貞
疑いをもって調査を進めておりますが、まだ最終の結論には達しておりません。
[017]
委員長(自由党) 内藤隆
メーデーの騒擾事件にかんがみまして、情報の収集と、それから警備実施の有機的一元化につきまして、現行の機構並びに法規で、局長としてあなたは十分であるとお思いでしょうか、その点について御説明を願いたい。
[018]
証人(法務府特別審査局長) 吉河光貞
お答えいたします。私どもといたしましては、与えられた組織、態勢、機構を活用いたしまして、最大限度の能率を発揮しなければならないというために、国警、自警とも緊密な連絡をとりまして、その能率の向上に努めておるのでございます。現行の機構、態勢におきましても、さらに格段の能率を発揮し得る余地ありとは考えております。
[019]
委員長(自由党) 内藤隆
この騒擾事件の主動をなしたと見られております全学連あるいは北鮮系の朝鮮人の団体に対しまして、特審局としてはどういう処置、対策を考えておいでになりますか。
[020]
証人(法務府特別審査局長) 吉河光貞
お答えいたします。目下これらの団体につきましては調査中でありまして、最終の結論は出ておりません。全学連につきましては、御承知の通り団体等規正令によりまして、都道府県単位以上の連合組織につきましては、政治団体として届出をさせまして、その動向はこれを監視いたしておる次第であります。一部破壊的な鮮人の団体的活動につきましては目下調査中であります。
[021]
委員長(自由党) 内藤隆
調査中ということですから、あまり深くは聞かないことにしますが、要するに全学連というものは共産党の細胞組織であって、しかも前衛的務めをしておる。それからまた北鮮系の鮮人も、広島なり京都なりのあの騒擾を見ますと、やはりその前衛隊としての活動をしておるのです。
かような破壊分子の団体的存在、あるいはそういう人々を国内に置くということは、日本の治安の上に重大な問題であると考えております。特審局としては全学連等に対して解散を命ずるの権限がないでしょう、あるいはまた北鮮系の鮮人に対してこれを強制送還するようなこともないでしょうが、しかし特審局が調べたその材料を基礎として、それぞれの各機関に善処方を要望するお気持はあるかどうか、この点をお伺いいたします。
[022]
証人(法務府特別審査局長) 吉河光貞
お答えいたします。委員長お尋ねの措置につきましては、政府最高首脳部の御決定になることであると思います。私どもといたしましては、その実体を的確に把握するということが何よりも必要である、この見地に立ちまして調査を進めておる次第であります。
[083]
改進党 椎熊三郎
実は私ども他の委員会で、これに関係した委員会が国会にはいろいろあるのですが、この方面で聞いておるところによると、終戦後密航した者の中に北鮮の軍籍を持つ者、軍事専門家が多数入って来ておる、それらが入って来て後、日共における軍事行動の指導というものが非常に活発になって、それらの訓練等は、主としてこれらの手によって具体的に行われておるということを聞いておるのです。
そういう事実が実際にあるのかどうか。またあなた方の調査の結果、あるいはまた実際に検挙した者の中に、そういう種類の者があったかどうか。
[084]
証人(法務府特別審査局長) 吉河光貞
お答え申し上げます。現在日本におきましては、在日鮮人の組織として民戦、祖防の2つの団体がある疑いがあります。この祖防には中核自衛隊が結成されつつあり、非常に極端な過激な行動隊組織を持つ疑いがあります。
そしてただいま御質問のような、北鮮系の軍人が国内に潜入して、こういう運動の指導に当っているのではないか、これは情報がございます。調査中であります。
[085]
改進党 椎熊三郎
このごろいろいろ不穏当と思われる共産党の……。
〔発言する者あり〕
[086]
委員長(自由党) 内藤隆
静粛に願います。
[087]
改進党 椎熊三郎
共産党の名によってなされておる指令のようなものを、まま私ども証拠品として見せつけられておる。国会におる卑怯未練な共産党などは、これは日本共産党でないということを言いたがっておる。
私もこれらのような卑怯な――は、これには関係ないだろうと思う。私思うのに、これらの人というものは、地下に潜行しておる日本共産党の本流を流れる、本質を行っておる者の手によってなされておる指導であって、こんな者がしておる指令ではないと思います。
しかしながらその地下に潜行しておる、本流を行っておる共産党の中に、8名からなるかつて共産党の指導者、幹部であった者が、いまだ検挙されておらぬ。徳田球一、野坂参三等これらであります。それらがこの指令に関係しておると思われるような証拠があるかどうか。
[088]
証人(法務府特別審査局長) 吉河光貞
先般コミンフォルムの機関紙に……。
〔発言する者多し〕
[089]
委員長(自由党) 内藤隆
答弁が聞えませんから、静粛に願います。
[090]
証人(法務府特別審査局長) 吉河光貞
コミンフォルムの機関紙に徳田球一名の論文が出ました。いわゆる五全協なるものの会議で決定したと称せられる新綱領の説明を述べております。かような事実からして、これらの諸君が、こういうような活動に関与されているのではないかという疑いを持つ根拠があるものと考えます。
[091]
改進党 椎熊三郎
大体私もそういうことを承っておったので、明確に御証言を得たが、徳田球一の名によって、そういうことは世界に公表せられておる。従ってこれらが潜行して、地下にあって指令を出しておることは間違いない。
私ども議会から見ると、それらの行動こそは日本共産党の行動であって、仮面をかぶって、この辺をうろうろしておるのは、共産党と称する日本の国会議員ではあろうが、役に立たぬ――――だけが来ておるのであって、追放になることもできぬような――が来ているのだと解釈しておる。
それですから、あなたはこの証言台に立たれましても、それらがままあなたの発言に批判を加えたり、妨害をしたりしても、そんなことでもしておかないと、党へ帰って叱られる――なんですから、これを気にしないで、自由なる御発言を願いたいと思います。
昭和27年06月30日 衆議院 本会議
[032]
自由党(自由民主党) 内藤隆
行政監察特別委員会は、御承知のごとく、昭和26年2月6日に、衆議院本会議の決議によって創設されたものでありまするが、第13国会におきましても継続して設置すべきことが決議されたのであります。本国会の会期は延長されましたが、本日ここに本委員会において調査を行いました諸事件につきまして御報告を申し上げたいと思うのであります。
(略)
最後に本委員会が調査しました問題は、今日のわが国の大問題である治安警備状況に関する件であります。
本年1月21日、北海道札幌市において、市警の白鳥警部が射殺された事件が起り、事件の前後、日本共産党がこの事件に直接間接関係のあるビラの貼示やデモ行動等に出ているという情報を聞知しましたので、委員会は時を移さず委員の実地調査を決定し、篠田(※弘作。自由党)、高木、椎熊(※三郎。改進党)、田淵(※田渕光一。自由党)の4委員は飛行機で現地に急行して調査を行い、また京都騒擾事件が突発するや、折からの自然休会を利用して、委員会は田淵(※田渕光一。自由党)、野村、押谷(※富三。自由党)、井上、高倉(※定助。改進党)の5委員を現地に派遣して実地調査を行ったのであります。
このほか、事務局に命じて、広島県、長野県、東京都、愛知県において頻発した警察官に対する殺人傷害事件または集団暴行事件等の下調査を行わしめていたのでありますが、下調査の完了した京都市及び広島県の集団暴行事件をまず取上げて委員会を開会し、証人尋問を行ったのであります。
この調査中、たまたま5月1日のメーデーが間近に迫ったので、特に京都市騒擾事件のごときが起る可能性も看取されたので、本員、委員長として、特にメーデーに不祥事件の繰返されないよう警告を発するため、一文を草して、談話の形式でこれを公表し、写しを各関係取締り官庁、各新聞社及びメーデー主催者側たる総評等へ送付しておいたのであります。しかるに、不幸にも本員の杞憂は杞憂で終らなく、まったく京都市騒擾事件と闘争性格を一にし、しかも、より暴力的、破壊的の一大不祥事件が皇居前広場に展開され、流血の惨事を惹起し、講和発効の新生独立日本に歴史的汚辱の刻印を押し、諸外国に異常の聳動(しょうどう)を与えたことは、きわめて痛恨事といわなければなりません。
本委員会は、早急にメーデー騒擾事件の真相の調査に従い、これを中心議題とするほか、蒲田事件、長野事件その他もあわせて監察を行う委員会を開催しましたが、その結果は
1、前記各種事件は、いずれも日本共産党の新綱領と軍事方針に基くいわゆる軍事活動の一環として計画されたものであること。
2、日本共産党は、最近の国際情勢の変化に対応し、民族解放、民主統一戦線を当面のスローガンに掲げ、平和運動の名のもとに反米抗争を展開し、特に学生、婦人層に働きかけつつあること。
3、労働者、農民、特に自由労務者の経済的要求あるいは日常生活の不平不満を取上げて、たえずいわゆる大衆の自衛抵抗闘争の展開を広汎に企図していること。
4、右自衛抵抗闘争を強力ならしめるために、職場、学校、部落等にいわゆる中核自衛隊を結成し、さらにこれを人民軍パルチザンに発展せしめるため、府県、地区等に軍事委員会を組織しつつあること。
5、警察官、駐留軍の武器奪取を指令するとともに、栄養分析表等の秘密出版物により、広汎にわたって催涙ガス、火炎弾等の製造法、使用法が指示され、すでに相当量が準備使用されていること。
6、陽動作戦並びに遊撃作戦の訓練が施され、かつその技術が巧妙になりつつあること。
7、民主的労働組合、団体等を内部から切りくずし、その指導権を握ろうとし、また集会、行進等の機会を利用して暴動化をはからんとしていること。
等でありますが、特に最近の事実として注目されるものは、北鮮系在日朝鮮人との間に日鮮共同闘争の態勢が確立し、在日朝鮮人が日本共産党の最も有力な尖兵となりつつあり、幾多の恐怖戦慄すべき事態を引起したことであります。(拍手)
すなわち、北鮮系在日朝鮮人の間に祖国防衛隊並びに祖国防衛委員会組織が急速に伸びつつあること、在日朝鮮人に対し、強制送還を歪曲して宣伝、煽動することによって、北鮮系朝鮮人勢力の拡大と日共勢力の浸透を企図していること等の事実が指摘され、在日朝鮮人の問題は、新生日本の治安の警備の上の重大な問題として、その対策を講ずることが焦眉の急務であると痛感されたのであります。
(略)
昭和28年03月05日 衆議院 地方行政委員会
[016]
政府委員(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
御承知のように、昨年の下半期の白鳥事件からメーデーあるいは吹田事件からこれまでの間に、全国的に起りましたあの火焔びん的街頭の集団暴力行為の様相は、これは一々申し上げるまでもございませんが、あの事態は共産党の第五回全国協議会で採択されました新方針にのっとったものであることは申し上げるまでもありません。
この方針は、一言で申しまするならば今までの共産党の観念的な行動を清算して、共産党の最終目的は、武力闘争によって政権を奪取しなければならないという、この実践に移るという宣言をしたわけであります。それに基きまして軍事方針を打ち出す、軍事組織、軍事活動というものに全面的な力を入れて参ったのであります。その結果が、ただいまも申しまするように、昨年の下半期の様相を示したのであります。
(略)
そこで日本共産党の軍事組織は、御承知のように軍事委員会によって統轄をされておるのでありますが、その組織の行動的部面を受持ちまするいわゆる中核自衛隊は、現在われわれのところにわかっておりますのは約600隊でありまして、隊員数が5500名でございます。われわれのわかっている資料によるものはさようであります。
またこの中核自衛隊のほかに、遊撃隊組織というものを昨年から組織するようになって参りました。われわれ当初は、この遊撃隊組織というのは、彼らの文書、レポ等の中に現われておったのでありますが、これの実体をつかみ得なかったのであります。しかし御承知の昨年8月埼玉県に発生しました横川事件を取調べて参りますと、これには西部遊撃隊及び武蔵野第一独立遊撃隊というものが存在し、これらの隊員によって行われたということが明確になって参ったのであります。この遊撃隊組織も全国にわたって次第に進んでいるように見受けられるのであります。
この中核自衛隊及び遊撃隊組織のほかに、日本共産党では中核自衛隊などの今申しました軍事組織の補給源といたしまして、あらゆる闘争の中に反ファッショ委員会、青年行動隊、その他いろいろの名称で、いわゆる抵抗自衛組織というものの活動を強く推し進めている現状であります。
現在の共産党の組織と、その党員の数の概略を申し上げてみますと、公然組織、いわゆる合法組織の面におきましては、御存じのように中央、それから9つの地方、各県、及び県内の地区、それから郡市、その下の細胞というようにわかれておりますが、党員は約9万、シンパ数が約18万と推定をいたしております。
非公然の組織も公然組織に対応するものでありますが、この非公然組織のメンバーとして活動いたしております党員が、先ほど申しましたもののほかに3万8000、それから先ほど申しました中核自衛隊という特別な組織のものが約5500、これらの組織、並びに党員、シンパ等の数は、いろいろな資料からわれわれ推定をいたしておるのでありまするが、最近党の中央部におきましては、秘密指令をもって、各府県内の政治地図を作成をするように命じておるのであります。
これらの求めておりまするところは、その細胞に至るまでの組織、その組織内の党員、シンパの数、これを町村郡市別に図面に入れまして、なお共産党の発行いたしておりまする秘密文書と申しまするか、冊子と申しますか、そういうものの購読者の数、種類、それから朝鮮人の数、朝鮮人のうちでいわゆる祖国防衛隊の隊員、あるいは民主愛国青年同盟の隊員の数、そういったぐあいに、朝鮮人の中でいわゆる北鮮系と目される、われわれの治安対象になりまする、彼らの軍事的活動としてただちに立ち上れる組織内に入っておる者の数、あるいはそれが立った場合に、同時に立つであろう者の数というぐあいに、共産党の彼らのほんとうの勢力、北鮮系の、彼らに呼応する真の勢力というものを、各図面に入れて報告をさせておるのであります。
その中には、重要工場、あるいは彼らの言葉をもっていたしまするならば、日本の防衛力といいますか、あるいは権力的なものといいまするか、具体的に申しますると、駐留軍の駐在地、そこの兵員の数、保安隊の駐在地、隊員の数、警察学校の所在地、その数というものを丹念に記入をさせて報告をいたさせております。
自分自身の勢力と、これに対抗するであろう日本側及びアメリカ駐留軍の勢力、並びに彼らの目標とする電源地、重要工場、その工場内における工場労働者の数、その中において彼らに呼応し得るであろう数、こういったものを丹念に調査をしておるのであります。
そういったものからも、われわれ先ほど申し上げましたような数字を推測をいたしておるのであります。もちろんわれわれの方で、そういった中央に報告するもの一切を知っておるわけではございません。ところどころそういうものを入手し得たものから推測をいたしておるのであります。
ことに組織の面におきましても、訓練の面におきましても、いわゆる祖国防衛委員会に所属をいたしまする北鮮系の活動は、さらにとみに潜行的に活発化をいたしております。彼らの非合法面における各種の隊の組織の推進化、実際の訓練というものも、最近特に活発になって来ておるように見受けられるのであります。祖国防衛隊の方には8000名の決死隊を結成をするということも聞いておるのであります。これはまだ私がはっきりその決死隊ができておるということを確言するには至っておりません。しかしこれは単なるうわさ、想像の程度ではないであろうと考えて、おるのであります。
(略)
昭和28年07月06日 衆議院 予算委員会
[021]
法務大臣(自由党) 犬養健
昨年の7月15日に徳田論文が出まして以来、表面に出ての暴力主義的破壊行動というものは、今のところ跡を絶っておるわけでございます。しかし率直に申しますならば、今後それではわれわれは手ぶらで安心してよいかというと、私どもはそう考えておらずに、準備をしておるわけであります。と申しますのは、これらの暴力主義的破壊運動というものは、国際的な連関性を持っているのではないかというところを、私どもが注目いたしておるわけでございます。
従って昨年の7月以来、表面に暴力主義的破壊運動が現われないのは、個々の土地においてそういう暴力行動はよくないといって自覚してやめたのではなくて、ある関連性を持って、しばらくそういう運動はやめておいた方がいいということでもってやまっているという観念を持っているのであります。ことにそれは国際的な関連性を持っていると考えておりまして、一朝国際情勢において、暴力主義的破壊行動がよしと見られる時期が来たならば、起らないとも限らない、絶対に起り得ないという態度を当局が持つのは、当局が任務を十分に尽していることにならない、こういうふうに考えているのでございます。
なぜ国際的関連性を持っているかということは、一々ここで申し上げるのも何かと思いますが、一番著しい、私どもの研究の対象となっている一つとしましては、昨年のメーデーの騒擾事件でありまして、あのメーデーが5月1日に行われまして、同じ月にフランスにおいて、アメリカのリッジウェイ司令官帰れという運動がパリにおいて行われましたが、このときに日本のメーデーで騒擾事件を行った人々の階級別といいますか、それとパリで行われた騒擾事件の人々の種類わけとが、偶然かもしれませんが非常に一致している点がある。すなわちこちらでは学生、朝鮮人、それから常勤的な共産党員、パリにおいては、学生、アルジェリア人、それから常勤的な共産党員、両方ともプラカードをはずすとすぐ騒擾の武器に直せるというのが非常に類似性を持っておりますので、私ども責任ある当局としましては、これらの類似性を真剣に今探究いたしておるわけでございます。
従って今静かであるからもう安心していいという考え方を、私どもは持っておりません。また戦車を繰出したり何かする必要があるかないかということになりますと、どうも私はちょっとそれについて専門的なお答えをしかねるのでありますが、大体原則として、同時多発的な騒擾事件が起りましたときは、これをとりしずめる方が、一段と有力な構えをしていなければ、なかなかむずかしいものである。突発のときは当局は受身でありますから、それをとりしずめるには、一段と有力な構えが必要であるという原則は、ここで申し上げ得ると存じます。
昭和28年09月17日 衆議院 外務委員会
[176]
法務大臣(自由党) 犬養健
私ども当局で想像しているところによりましても、ことに先日新聞を騒がせました関三次郎という男がソ連の牒報機関として不法入国をしております。その者の携帯している暗号の乱数表その他から想像いたしまして、関の前にも関があったのではないか、また今後も十分あり得るのではないかと想像し得るのであります。なぜそういう想像をいたすかという根拠の詳細になりますと、あるいは秘密会でもお願いしないと申し上げにくい点もあるのでありますが、結論を申し上げますならば、関三次郎が初めての関三次郎とは思えない節があるのでございます。これに対しては、十分公安調査庁、警察その他でもって今後とも、このケースにかんがみまして、調査警戒を新たにしているのでございます。
御承知のようにこれはもう須磨さんの方がお詳しいのでありますが、かような地下運動的な破壊運動といいますか、これはもう明確に国際性を帯びております。一つどころから指令が出ている場合がきわめて多いのでございます。須磨さんが御指摘になったと思いますが、この前の国会の予算委員会で私は破壊運動の国際性について答弁をいたしたのであります。一番著しい例は、昨年のメーデーにおける東京の騒擾、メーデーからわずか20日遅れたパリにおけるリッジウェイ・アメリカ司令官帰れの運動とが、構成分子あるいは武器の使い方から同じなのであります。
もう一度繰返させていただきますならば、メーデーにおきましては、構成分子は学生と朝鮮の人とそれから常勤的な共産党員、パリにおきましては学生とアルゼリア人と常勤的な共産党員、プラカードの上をはがしますと、くぎが出ましてただちに武器に使用できる方法まですっかり同じなのであります。ほんのわずかな現象ですが、氷山の一角でありまして、国際的な関連性が非常に周密な組織をもって行われている、こう思うのでございます。
こちらで感じられます点は、統一政府をつくれという1924年にモスクワで指令が出ました。その基本はいまだに続いているのでありまして、つまり革命に寄与するあらゆる社会層ならば毛ぎらいしないで動員しろ、これは日本でもこの手で行われておるのでありまして、現在現われておりますのは、反米、反吉田、反再軍備、こういうスローガンなのであります。これによりまして、それが地下運動的な武装闘争とうらはらになっております。
たとえばこの間ひんぴんと起りました各地の水害、これに共産系の人が派遣医を出しまして――派遣医の出し方がこれは建軍、軍を建立するための闘争である。こういうような言い方である。従って災害に悩んでいる人を助けながら、いかにアメリカの政策が悪いかいかにアメリカに追随している現政府の政策が悪いかというふうに、そこで説くわけであります。あらゆる現象、あらゆる機会を通じて、武装と国際的な規模を持つ革命への推進ということが相当緻密に行われていると私は思うのであります。
また私ども当局で相当注意しておりますのは、この秋お米の凶作、あるいはスト攻勢などと関連しまして、この武装闘争というものがテスト・ケース的に起るのではないか。これはあまり神経質にはなれませんが、しかし十分周密に注意しているわけであります。御質問に対して当らない答弁かも存じませんが、一応申し上げておきます。
昭和29年04月27日 衆議院 地方行政委員会
[046]
政府委員(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
それではこの8件の事件の概要を申し上げます。
(略)
次に東京メーデー事件も御承知の通り、昭和27年のメーデーに参加をいたしました諸団体のうち、全学連、北鮮系の朝鮮人団体等約4000名がデモ隊の解散地であります日比谷公園で解散をしないで、皇居前で乱闘をいたしまして、これを防止せんといたしました警官隊に対しまして暴行を加え、米軍自動車10数台を焼却した事件であります。これは御承知の通りの事件であります。非常事件の内容を御説明いたしました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/血のメーデー事件
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