昭和26年03月22日 衆議院 法務委員会
[072]
自由党(自由民主党) 押谷富三
お尋ねをいたしますことは、昨朝起りました朝鮮人による米兵に対する暴行事件であります。昨21日の午前3時半ごろに、浅草の千束町の朝鮮マーケット附近におきまして、6名の米兵が多数の鮮人に取囲まれまして、集団的に暴力を加えられて、1名は死亡する、2名は負傷する、自動車も破壊されるというような不祥事を起したのでありますが、わが国の講和を前に控えて、今日日本の置かれたる国際的地位などから考え、この時期を思いまするときに、まことに遺憾しごくな事件だと考えます。こういう大事件が起って、それを私どもが考えますときに、この事件はいろいろな意味において重要性を持っておると思います。
まず事件の全貌などを伺いたいのでありますが、事件はまだ捜査段階にあり、特に警視庁の方面から総監においでを願うことになっておりましたが、まだ本日はおさしつかえでお見えになりませんから、これは明日でも警視総監にお尋ねをすることにいたしまして、総裁におかれて今入手せられております情報等によりまして、次の点をお尋ねいたしたいと思います。
まずこの朝鮮人の暴行事件におきまして、時間的に午前3時半という時刻において、100名からの朝鮮人が一ところにただちに集まって来ておるというようなことから、あるいはその前日は台東会館事件のちょうど1周年記念日に当っておるということから、現場付近には強制送還の反対であるとか、民主民族戦線などといったビラ、ポスターが張られておったというような事実を総合いたしまして、一つの計画的な犯罪ではないか、計画性の確度合いがきわめて高いものではないかという感じがいたすのでありますが、この事件について入手せられました情報によって、この事件の計画についてまずお尋ねをいたしたいと存じます。
それから昨年暮れから今春にかけまして、ずいぶん朝鮮人暴動事件が起っております。都内においても最近上十条の朝鮮人暴動事件、この事件などきわめて重要な相貌を現わしておるのでありますが、このようなときに対朝鮮人関係における治安の対策というものは、一般とむずかしいと思いますが、法務総裁におかれましてこれに対する治安の対策関係、これもお尋ねをいたしたいと思います。
さらにもう一点、昨年の関西方面における朝鮮人騒動事件の直後でありましたが、たしか法務総裁の新意見でなかったと思いますが、この騒乱事件に関係をし、計画をし、指導をした、いわゆる騒擾事件の首魁といったような者に対しては、本国送還の立法的処置をするものである、政令によって本国送還をするという新発表があったごとく考えております。これについてその後どういう経過になっておりますか、重ねてこの点もお尋ねをいたしたいと思います。
[073]
法務総裁(自由党) 大橋武夫
昨日午前3時過ぎに、東京都浅草千束町におきまして、新聞紙に伝えられましたがごとき不祥事件を発生いたしましたことは、帝都の治安に重大なる不安を与える次第でございまして、政府といたしましては衷心から遺憾に存じておる次第でございます。特にこれがために、占領軍の方が不慮の災厄を負われるというような結果を生じましたことは、重ね重ね遺憾にたえない次第でございます。
この事件の概要を、ただいま報告を受けております範囲において、簡単に申し上げますと、昨日午前2時ごろ東京都台東区浅草千束町2ノ4でありますが、これは俗に旧十二階下と言われる地区であります。ここに米兵6名が参りまして、この地区内にありまする朝鮮人マーケット内の通称高本浩振こと高浩振方に参りまして、そのうち3名が宿泊をいたしたのでございます。それから間もなくなお3名の米兵が同地に参りまして、その高の宅の屋内に入りまして、いろいろ談話をいたしておりまする間に口論を生じまして、おののごときもので腹部に瀕死の重傷を負わされました。これはそのうちの1名でございます。それで他の米兵が、これを乗用車1万3374号にかつぎ込んだのでありますが、この米兵を追跡いたしまして、約20名の朝鮮人が石や棒切れをもって迫りまして、車を包囲いたし、暴行を加えまして、車の窓ガラスを破壊するということになったのであります。
このときに、暴行の様子を見ておりました者が、田原町の派出所に急報をいたしましたので、関根巡査が現場に急行いたしましたところ、同巡査の携帯いたしておりましたところのピストルをもちまして、アメリカ兵が威嚇発砲をいたしまして、群衆を追い払ったのであります。所轄浅草署におきまして、ただちに予備隊の応援を得て現場を包囲いたしまして、約50名のその場にありました者を同行して取調べをいたしておる次第でございます。
今日までに入手をいたしておりまする情報から判断をいたしますると、この付近の朝鮮人が、非常に反米的な空気が当日あったということは、これは十分に想像し得るところでございますが、事案は、ただいま申し上げましたる通り、どちらかというと偶発的なものでございまして、必ずしも計画的な犯罪でないのではないか、かように想像をいたしておる次第でございます。
と申しまするのは、午前3時という時刻に、きわめて短時間の間に数10名という多数の鮮人が集合をいたしたということは、非常に奇異の感に打たれるのでございますが、この付近は大体終夜営業を続けておるというような地区でございまして、さようなことが、偶発的に起ったといたしましても、あり得ることではないか、この想像をいたしておるのであります。
もとより現在なお取調べ中でございまして、確定的なお答えを申し得る段階に至っておらないのでございますが、ただいままでの情報を総合いたしまして、推定をいたしたところを申し上げたのでございまして、後に、なお内容につきまして、真相と異なるものを発見いたしましたる場合におきましては、あらためて御報告をいたしたいと存じます。
それからもう一点、朝鮮人の暴力事犯その他の不法行為をいたしまする者に対しまして、これを本国に送還するような措置を講じたい。これは昨年以来政府といたしまして、神戸事件その他次いでの朝鮮人の集団的暴行事件を契機といたしまして、治安上の必要という見地から考えておるところでございまするが、これは今日なお研究いたしておる状態でございまして、まだこれを実施の段階に移すという程度にはなっておらないのでございまするが、引続き研究を進めつつあるということは事実でございます。
[081]
法務総裁(自由党) 大橋武夫
アメリカ兵に対しまする暴行事件といたしましては、従来数件起っておるにすぎないのでありまして、ことに今回のごとき集団的な凶悪事件は初めてのことでございます。
当局といたしましても、これは非常に重大な犯罪である、かように考えておるのであります。将来におきましてかような犯罪が重ねて生起いたすことのないように十分慎重に考えて参りたい、かように存じております。
昭和26年03月23日 衆議院 法務委員会
[002]
自由党(自由民主党) 押谷富三
浅草の米兵殺傷事件につきまして、警視総監にお尋ねをいたしたいと思います。すなわち一昨日午前3時半過ぎに浅草千束町朝鮮マーケット付近におきまして、米兵6名が朝鮮人の集団暴行を受けまして、1名死亡し2名負傷するというまことに不詳事が起ったのであります。
今講和を目前に控えておりますわが国の置かれたる国際的な立場から、かような事件を引起しましたことは、残念しごくに存ずるのでありますが、この事件につきまして、帝都治安の重責をになっておられる警視総監におかれて、この事件を捜査せられました今日の状況において、事件の全貌をここで許される範囲で御説明をお願いいたしたいと存じます。
[003]
参考人(警視総監) 田中榮一
ただいまの御質問に対しましてお答え申し上げます。ただ事前に一応御了解を願っておきたいと存じまするのは、本事件は米兵に対する暴行致死事件でございます。従いましてメモランダムによりまして日本側に裁判権がございませんので、アメリカ軍当局におきましてただいま捜査中でございますので、事実につきましてお話申し上げたいと存じますが、捜査の経過その他につきましては、全然私ども了知できない状況でございますので、その辺ひとつお含みおき願いたいと思います。
発生いたしましたのは3月の21日午前3時ごろでございまするが、場所は台東区の浅草千束町2丁目4番地、通称国際マーケットと称するところでありまして、このマーケットにいるのは大部分が朝鮮人であります。
その状態はあるいはパンパン宿をやったり、あるいはかつぎ屋をやったり、そのほか無職の者が多数おる場所でございまして、そこへちょうど午前3時ごろ米兵6人が自動車で参りまして、そのうち1人の米兵が、いわゆるポン引と称しまする金という朝鮮人と、どういうことが原因であったか、これもまだはっきりいたしませんが、両者の間に争いが発生いたしまして、それと同時に他の朝鮮人等も屋外に密集して参りまするし、また他の米兵もその1人の米兵をかばうために双方の間に乱闘が始まったのであります。
そうしているうちに、他の米兵3名は他へようやく身を脱したのでありまするが、残りの3名のうち1名が非常な瀕死の重傷を負いまして、この重傷を負った米兵を他の2人がかばいまして、そうして自動車に乗せて途中まで来たのでありまするが、自動車が徐行して参るあとから、朝鮮人がさらに追及して参りまして、石やら、かわらやら、物件をその自動車に投げつけまして、あらゆる暴行をいたしたのであります。
その自動車もそのまま運行不能に陥りまして、比較的軽傷の他の2人の米兵は、ようやく自動車から身を脱しまして、ちょうど折よく小型の自動車がそばを通ったので、その自動車にただちに乗りまして、蔵前警察署管内の田原町の交番に訴え出たのであります。十分言葉はわからなかったのでありまするが、関根という巡査がただちに異変の起ったことを察知いたしまして、その自動車でさらに現場にかけつけたのであります。
それと同時にその異変の起りました付近の者が警視庁の110番を呼び出しまして、ただいま米兵を朝鮮人との間にけんかが起っておる、ただちに警察官の派遣を願いたいと警視庁の5階の司令通信室にかかって参ったのであります。その110番の電話を受けますると、ただちに深夜警邏中のパトロール・カーに無線をもって連絡いたしますると、そのパトロール・カーがただちに現場に到着いたしまして、その米兵と関根巡査と一緒に現場に参ったのでありまするが、その途中におきまして、関根巡査の拳銃によりまして、米兵のうち1名が威嚇発砲したために、その朝鮮人はさらに暴行しようというのを思いとどまりまして、くもの子を散らすように、それぞれおのおのの家に逃げてしまったのであります。それと同時に、その瀕死の重傷を負いました米兵をパロール・カーに乗せまして聖路加病院に運んだのであります。
ただちに本署に連絡をとりまして、本署から、浅草警察署から多数の警察官が参りまして、その付近一帯を全部包囲いたしまして、また予備隊から1個中隊応援派遣をもらいまして、さらに広範囲の地域の包囲捜査をいたしたのであります。そしてありの出るすきもないようにぴったり包囲をいたしまして、その区域に住む全員を家の前に立って――これはMP側の要請によりましてかような措置をとったのであります。
それと同時にまず街頭の関係者と思われる男並びに若干の、少数の女性等94名を浅草警察署に全員出頭を求めまして、そうして一々捜査いたしたのでありまするが、そのうちまず関係のないと思われるものははるべく早く帰ってもらいまして、一応44名の者を留置いたしたのであります。
これらの者はいずれも軍事裁判所の令状によりまして留置されたのであります。それで現在はCIDの方において事件の内容を調べておりますが、事件は日本人数名を含む朝鮮人数10名がこれらのGIに集団的に暴行を加えまして、まことに遺憾なことでありまするが、1名が死亡せられたのであります。
このマーケットは、大体朝鮮人が主として住んでおりまして、現在はっきりした人員はわからないのでありますが、あの付近の一帯に住んでいる大体の朝鮮人の数というものはまず250名くらいではないかと考えております。そのうち現在地に登録されておりまする者が、わずかに98名ないし100名くらいでありまして、あとの150名というものは住居不定の者でありまして、所々方々を転々として、いわゆる渡り鳥的に転々として歩く者でありまして、従ってそこに定住しておるものは、ごくわずかであります。100名内外であろうかと思います。
これらの朝鮮人は主としてやみ屋、かつぎ屋――俗にかつぎ屋と申しまするが、やみ屋をやったり、あるいは売春宿を提供したり、あるいは客引が主でございまして、比較的まじめなものはカフェーあるいは一ぱい飲み屋などを経営いたしております。これはきわめて小部分であります。
なおそのほかに今国際マーケットのあります付近に――浅草公園の付近でありますが、その辺に約100名くらいの朝鮮人が住んでおります。なおそのほかに6区に約400名ほどの朝鮮人が住んでおりまして、大体業態は売春婦であるとか、客引あるいは古着屋、露店等を経営いたしております。露店は主として皮革製品だとかあるいは石けんとか、あるいはゴムぐつ、ゴム製品等を販売いたしております。
それで、大体におきまして、この朝鮮人の思想問題でありますが、指導力を有する主要人物というものはほとんどないようでございまして、あまり統制はとれずに、まちまちな行動をとっているようであります。中には昨年の3月20日台東会館接収に際しまして、これに参画いたしまして若干暴行を働いた者も少数いるようであります。大部分北鮮地域の旧朝連系に属するものと見られております。非常に附和雷同性の強い、過激な性格を有するものであります。
ただ今回の事件につきましては、私ども事件発生の経過から、また時刻、周囲の状況等から考えまして、偶発的な事件でございまして、別に計画的にかかる暴行をやったということはちょっと考えられないのであります。ただ彼らの胸中は意識的には思想傾向としまして、多少反米的な傾向もあったかと考えられるのでありますが、今回の事件に関する限りは、私どもとしては単に偶発的の事件であろうという見解を持っているわけであります。
なお本事件はただいまCIDが責任を持って捜査をいたし、処理しておりますので、日本警察としましては、CIDの命令により捜査に従事し、活動いたしておりますので、私がただいま申し上げました以上のことは証言できないのでありまして、これ以外に必要なことに対しましては、さらにまたCIDの指示を受けた上でないと御答弁できませんので、その点ひとつあしからず御了承願いたいと思います。
https://ja.wikipedia.org/wiki/浅草米兵暴行事件
#浅草米兵暴行事件 のツイート